ガンマ線観測衛星インテグラルの活躍
隠れたブラックホールの発見&ガンマ線で見た銀河系

【2003年11月12日 ESA News (1) / (2)

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が2002年10月に打ち上げたガンマ線観測衛星インテグラルが、たくさんの発見をもたらしている。ガンマ線は宇宙で起こっている高エネルギー現象の観測に適しており、X線でも見えないような現象の観測に性能を発揮する。また、他の波長で観測した現象をガンマ線でも見ることで、さらに新しいことがわかってくることもある。最近発表されたインテグラルの成果を紹介しよう。

隠れたブラックホールの発見

今年1月にインテグラルが行った観測により、低温高密度のガスに包まれて隠されていたブラックホール(または中性子星)連星が発見された。この天体は、X線など他の波長の観測からは見つかっていなかったものだ。

IGRJ16318-4848という番号の付けられたこの天体までの距離ははっきりとはしないが、少なくとも銀河系内にあることは間違いないようだ。解析の結果、ブラックホールや中性子星のような天体とひじょうに大質量の星との連星系であることも明らかになっている。

他の波長の観測でこれまで見つかっていなかったのは、この連星系の周りを厚い層が取り囲んでいるためと考えられている。エネルギーの低い電磁波はブロックされてしまったが、ガンマ線はエネルギーの高い電磁波なので、その層を突き抜けて観測できたのだろう。実際、ESAのX線衛星XMM-Newtonによる観測から、地球軌道サイズ(直径約3億キロメートル)ほどの低温ガスの塊が存在していることがわかった。ガスの塊は、大質量星から放出されたガスがブラックホールの周りに降り積もって形成されたと考えられている。

インテグラルとXMM-Newtonによるその後の観測により、似たような天体が2つ新たに発見されている。このような天体をさらに見つけ出すことで、高エネルギー天文学に大きく貢献すると期待されている。

ガンマ線で見た銀河系

インテグラルによる銀河系のガンマ線観測から、銀河系内の化学組成がどのように変化してきたかを探ろうとしている。

(ガンマ線で見た銀河系の画像)

インテグラルが観測した、ガンマ線で見た銀河系の一部。円は既知のガンマ線源(提供:ESA / SPI team)

インテグラルが注目しているのは、銀河系全体に広がっている放射性アルミニウムだ。この元素がマグネシウムへと変化する際に特定のガンマ線を放射するので、そのガンマ線を観測するのである。また、放射性鉄元素の分布も同時に観測している。

これらを観測すると、銀河系内で最近どのくらいの数の星が一生を終えたのか明らかになる。特に、放射性の鉄の分布が放射性アルミニウムと一致している場合は、アルミニウムの分布は超新星爆発によって作られたものだと考えられるということだ。従来は放射性の鉄に由来するガンマ線は弱くて検出できなかったのだが、インテグラルの性能によって検出が可能になったということである。

さらに、銀河系の中心方向を詳しく調べることで、「反物質」の分布についても新しいことがわかると期待されている。インテグラルによるガンマ線観測は、私たちに新しい宇宙像を見せてくれている。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>