11月24日早朝、南極で皆既日食

【2003年11月20日 国立天文台・天文ニュース(683)

11月24日早朝に南極で皆既日食が起こります。日本ではNHKおよび民間団体「ライブ!ユニバース」によって、中継される予定で、テレビかインターネットで白い大地の上で起きる黒い太陽を眺めることができると期待されています。

皆既日食は太陽が月に隠される現象です。その時の月の影が、地球のどのあたりに落ちるかによって、どこで日食が見られるかが決まります。今回の日食では、月の影がぎりぎり地球の南側の端、つまり南極大陸に落ちることになります。

極地方で起きる日食は、それほど珍しいわけではありません。20世紀中に南極で日食が起きたのは、部分日食を含めると15回、皆既日食に限れば6回ありました。ただ、本格的に観測や中継が行われる皆既日食は、南極では今回が初めてです。前回の皆既日食は1985年11月12日、その前が1950年3月18日でしたが、いずれも皆既の時間も非常に短く、場所もごく狭いところに限られていたため、中継も観測も行われませんでした。さらにその前となると1939年10月12日ですので、基地の設備が整う以前、南極踏査が精一杯の時代で、気象条件も厳しいために日食どころではありませんでした。今回の南極での皆既日食は、人類が南極に足を踏み入れてから、初めて見る日食といっていいでしょう。ちなみに、次に同じような条件の皆既日食が南極で起きるのは2021年12月4日となります。

皆既日食では、普段は太陽に隠されて見えないコロナが見えます。黒い太陽のまわりに美しい繊細な流線をもつコロナの眺めは非常に壮観です。この時期、南極は太陽がほとんど沈むことがない白夜を迎えています。南極ですから太陽が空高く上がることもありませんので、高度の低い、つまり地平線に近いところで起きる日食となります。地平線に近いと、その壮観な眺めが視覚的に強調されることがあるようです。どのような映像が見られるか楽しみですが、NHKでは24日朝、総合テレビとハイビジョンで南極から史上初の皆既日食生中継を行う予定です。皆既食には成りませんが、97パーセントまで太陽が欠ける昭和基地、皆既日食となるロシアのノボレザレフスカヤ基地、それに航空機と3つの地点からの中継が予定されています。また、珍しい天文現象ごとにインターネット中継を行ってきた民間団体「ライブ!ユニバース」では、ロシアの砕氷船を使ったツアーに同行し、シャクルトン・アイス・シェルフ(Shackleton Ice Shelf)と呼ばれる観測地から、映像と音声をインマルサットやイリジウムなどの通信衛星経由で日本の配信センターに送られ、ここからインターネット上に配信される予定です。

いずれにしても、休日の早朝、お茶の間に居ながらにして南極の日食が楽しめそうです。

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