すばる望遠鏡、宇宙の果てにある銀河の種を発見
【2003年11月26日 すばるトピックス】
東北大学を中心とする国際共同研究チームが、すばる望遠鏡を用いた観測からひじょうに軽い銀河を発見した。宇宙が生まれてから10億年しか経っていないころにある銀河で、銀河の成長過程を知る上で貴重な手がかりになると期待されている。
研究グループは波長810〜822ナノメーターの光のみを通すフィルタ(NB816)をすばる望遠鏡の広視野撮像カメラSuprime-Camに取りつけ、ろくぶんぎ座にある遠方のクエーサーSDSSpJ104433.04-012502.2と同距離に存在している銀河を探査した。宇宙が誕生して間もないころの銀河(赤方偏移パラメータが約5.7となる銀河)が発するライマンα線(水素原子が放射するスペクトル線、波長122ナノメートル)は、赤方偏移によりNB816フィルタが通す波長800ナノメートル付近の光として観測されることになるので、この波長での観測により宇宙誕生から間もない銀河を見つけることができる。また、この波長帯では地球大気の夜光が弱いため、広視野のSuprime-Camとの組み合わせは遠方の銀河を探査する上で最適なのだ。
2002年2月の観測によって見つかった天体のうちの1つをさらにケックII望遠鏡で詳しく分光観測したところ、銀河の水素ガス雲の速度分散がわずか秒速20キロメートルしかないことがわかった。この速度から推測される銀河の質量は太陽の数億倍程度で、私たちの住んでいる天の川銀河系の数百分の一ほどしかなく、「銀河の種」とでも呼ぶべきくらいの大きさだ。
最新の観測成果に基づいて宇宙年齢を137億歳とすると、今回発見された銀河の種は125億光年かなたにあることになる。つまり、宇宙誕生から10億年程度でできあがったということだ。今後は、このような銀河の種が宇宙年齢と共にどのように成長していくのかを見極める観測が重要となってくる。現在開発中のすばる望遠鏡用の新しい赤外線カメラ(MOIRCS)が完成すると、さらに遠方まで見通すことができるようになる。今回の発見同様、銀河の歴史や宇宙の歴史の謎を解き明かしてくれるだろう。