ハッブルが捉えた、死にゆく恒星の姿

【2003年12月8日 JPL News Release

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、惑星状星雲形成中のジェットを直接捉えた。

(砂時計星雲の写真)

代表的な惑星状星雲、砂時計星雲(提供:NASA/Europan Space Agency)

我々の太陽のような小質量の星は、およそ100億年もの間、水素を燃料として燃え続ける。その後、1万年から10万年かけて、星はゆっくりと自身の質量を半分ほどになるまで放出し、さらに続く100年から1000年をかけて、美しい幾何学模様をえがく惑星状星雲へと姿をかえる。たとえば、はくちょう座の方向にある砂時計星雲などは、その代表例として私たちに美しい姿をみせてくれる。

ハッブルが今回観測したうみへび座Vは、まさに惑星状星雲への進化を始めたばかりの天体である。ハッブルは、この死につつある星から発せられている高速ジェットを捉えた。ジェットは惑星状星雲の形を決める役割を果たすと考えられてきたが、実際に直接観測されたのは初めてのことだ。これまでに観測されなかったのは、星の一生に対して惑星状星雲の形成期の時間がごく短いためであると考えられる。

今回の観測結果は、ジェットの吹き出しが何によって引き起こされているのか、という疑問についても、何らかの示唆を与えてくれそうである。過去のモデルによれば、星の周りの降着円盤がジェットの引き金になっていると予想されていたが、うみへび座Vの観測からは、伴星の周りにある降着円盤がジェットを生み出している可能性が高いことが示された。

今回のデータによって、今後、比較的短命な星々の進化についてより多くのことが明らかになるだろう。さらには、我々の太陽がたどるであろうシナリオを理解するための扉が開かれることにもなりそうである。