ハッブル望遠鏡のACSカメラが発見した、記録破りの2つの銀河団

【2004年1月9日 HubbleSite NewsCenter / Chandra Photo Album

NASAのハッブル望遠鏡に搭載されたACSカメラによって捉えられた、記録破りの2つの銀河団の画像が公開された。

(ハッブルのACSカメラによる銀河団RDSC1252とTN J1338の写真)

ハッブルのACSカメラによる銀河団RDSC1252(左)とTN J1338(右)(提供:NASA/ESA、謝辞:J. Blakeslee (John Hopkins University)、M. Postman (STScl)、G. Miley (Leiden Observatory))

(チャンドラによる銀河団RDSC1252の画像)

チャンドラによる銀河団RDSC1252(提供:NASA/ESA、謝辞:P. Rosati (ESO))

(TN J1338銀河団の画像)

TN J1338銀河団(提供:NASA/ESA、謝辞:G. Miley (Leiden Observatory))

まず一つ目は90億光年かなたにある銀河団、RDCS1252だ。観測によれば、この銀河団中の銀河に含まれる星の大半は110億年前(赤方偏移パラメータz=3)までにできあがっており、90億年前の段階で成熟した銀河団となっていたようである。銀河団の質量は少なくとも太陽の200兆倍もあり、今までで最大の質量を持った銀河団だ。大質量の成熟した銀河団が90億年前にすでに存在しているということは、ビッグバン直後から銀河の形成が始まっていたことを裏付ける証拠となるものである。

二つ目の発見は、宇宙が生まれて間もない、わずか15億年(現在の宇宙年齢の10%)のころの未発達な銀河団、TN J1338だ。この銀河団は成長の途上にある原始銀河団としてはもっとも遠いもので、赤ちゃん銀河が分布している。つまり、120億年以上も前(赤方偏移z=4.1)に赤ちゃん銀河が存在し、その銀河の中で星が生まれていたということだ。

原始銀河がビッグバン後に急速な成長を遂げた理由については次のように考えられている。それは、銀河が初期宇宙の中でも物質の密度がひじょうに高い領域に位置していたというものだ。この考え方は、チャンドラやXMMニュートンによるX線観測によっても正当性が強く支持されている。両望遠鏡の観測では、銀河団をとりまく巨大高温ガス雲(摂氏7千万度)と高温ガスのハローの形が捉えられており、RDCS1252がすでにかなり成長した銀河団だということがよくわかる。

RDCS1252を形作る何千もの銀河のほとんどは、通常ぼやけてはっきりと観測することはできない。だが、ACSカメラのパワフルな目によって、見事に約100個の銀河についてデータが提供され、一つ一つの形や色の決定がなされたのである。

今回のような遠方の銀河団の観測からは、初期宇宙を取り巻いていたと考えられている「冷たいダークマター」の性質について何か手がかりが得られることが期待される。今後これらの観測及び研究が進めば、宇宙の歴史全体というスケールにおける銀河団の形成と現在までの進化の過程が明らかにされるだろう。そうすれば、やがて完璧な銀河団成長図が描き出されることになる。