一般相対性理論が予測していた奇数の重力レンズ像が確認された
【2004年2月24日 CfA Press Release】
へびつかい座にある重力レンズシステムPMN J1632-0033の電波観測から、今まで知られていた2つのクエーサーの像に加え、同じクエーサーの3つ目の重力レンズ像が確認された。奇数の重力レンズ像が実際に観測されるのは珍しいことだ。
今回観測されたのは、地球から115億光年離れたクエーサーからの光が、途中にある80億光年離れた楕円銀河の影響を受けている重力レンズシステムである。このクエーサーの重力レンズ像については、以前から2つの像の存在が知られていた。
アインシュタインの一般相対性理論によれば、重力レンズの像の数は奇数になることもあるはずとされている。しかし、今までに発見された重力レンズの像はほとんどが2つか4つと偶数の像で、なぜ奇数のものがほとんど発見されないのかは20年間以上の謎でもある。
このように奇数の像は珍しいため、観測当初は、本当に同じクエーサーの3つ目の像であるかどうかが疑われた。他の2つの像とスペクトルを比較し、一部がレンズ源の銀河による影響を受けている以外はスペクトルが同じであることが確かめられ、3つ目の像が同じクエーサーのものであることが確認されたのである。
3つの像の形状や特徴から、レンズの役割をしている楕円銀河の中心部についていろいろなことがわかってきた。たとえば、中心にあるブラックホールは太陽質量の2億倍以下であることや、中心付近の表面密度が1平方パーセクあたり太陽質量の2万倍もあるということなどだ。これらの数値は、何百倍も地球に近い銀河の観測から得られている予測値と一致している。
われわれが知っている銀河の中心についての知識は、(宇宙のスケールで)きわめて近くにある銀河の研究から得られたものだ。一方、今回のように重力レンズ効果を観測し利用することで、はるかに遠くにある何十億年も前の若い銀河の中心についても同様に情報を得ることが可能となる。今回の3つ目のレンズ像発見によって、レンズ源となっている銀河やその中心に存在すると考えられている超巨大ブラックホールの研究が今後さらに進むことになりそうだ。