アインシュタインはやはり正しかった?暗黒エネルギーの性質に関する新たな手掛かり
【2004年2月26日 HubbleSite NewsCenter】
ハッブル宇宙望遠鏡が観測した、宇宙年齢が現在の半分のころより以前に爆発した超新星の明るさから、過去の宇宙の膨張率を探るという研究が行われている。これによって、宇宙全体に広がる暗黒エネルギーの性質を探るのだ。
ハッブル宇宙望遠鏡を使った深宇宙オリジン・サーベイ計画(Great Observations Origins Deep Survey: GOODS)では、すでに42の超新星が発見されている。現在知られているもっとも遠い超新星7つうちの6つは、この計画によって発見されたものだ。超新星の明るさから、過去のさまざまな時点における宇宙の膨張率を調べることができる。その膨張率に大きく関係していると考えられているのが、正体不明の「暗黒エネルギー」だ。
暗黒エネルギーは宇宙の7割を占めていると考えられているが、性質などについてはほとんど何もわかっていない。しかし、超新星の観測から求められた膨張率から考えると、暗黒エネルギーは少なくとも宇宙をすぐにつぶして終わらせるようなことはしないようだ。
暗黒エネルギーに関する解釈の1つとして、アインシュタインが提唱した「宇宙項」の役割を果たすエネルギーではないかという説がある。アインシュタインは、一般相対性理論から導かれる「宇宙が自身の重力によってつぶれてしまう」という未来を避けるために、重力に反発する仮想的な力として「宇宙項」というものを導入した。この暗黒エネルギーが宇宙項なのかもしれないということだ。後にアインシュタインは「宇宙項は誤りであった」と語ったとされているが、やはり彼は正しく、宇宙項は存在しているのだろうか。
暗黒エネルギーの謎を解くという大きな課題に対しては、ハッブル宇宙望遠鏡やその他未来の宇宙望遠鏡にはさらなる高性能が要求される。暗黒エネルギーの性質や正体を知ることは天文学や物理学の大きな目標の1つだが、議論は今後も長く続きそうだ。