もっとも遠い銀河の記録を更新!132.3億年前の初期宇宙の銀河
【2004年3月9日 ESO Press Release】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT(The Very Large Telescope)が、もっとも遠い銀河の記録を更新すると考えられる銀河を発見した。推定距離は132.3億光年で、これまでの記録130億光年を更新したことになる。
発見された銀河は、Abell 1835 IR1916と名づけられた。赤方偏移パラメータはz=10で、値が二桁のものが初めて発見されたことになる(これまでの記録はz=6.6)。距離に直すと132.3億光年、別の言い方をすれば、宇宙誕生からわずか4億7000万年後の銀河である。その質量はとても小さく、われわれの天の川銀河の数万分の一程度で、おそらく宇宙の暗黒時代を終わりに導いた第一世代の銀河と考えられる。
近年つくられた8から10メートル級の望遠鏡の活躍で、120億光年かなたの範囲にある銀河やクエーサーなどの天体の観測が可能になってきた。そして、銀河の形成や進化、特色などについて、宇宙の歴史の85%について研究ができるようになった。しかし、さらに遠方の宇宙となると、銀河の発する光があまりにもかすかなため、そのような大口径望遠鏡をもってしても観測には大きな困難を伴う。
そこで、銀河団による重力レンズ効果が大きな役目を果たしてくれる。巨大な質量を持つ銀河団の重力がレンズの役割を果たし、観測対象となる銀河の光を25から100倍も増幅させてくれるのだ。この効果により、今回のようにひじょうに遠方の銀河のスペクトルの計測も可能になったのである。
今回さまざまな波長で捉えた銀河のイメージから、この銀河が星形成の段階に入っていること、質量が太陽の1000万倍しかないこともわかった。現在見られるような巨大銀河は、このような小さな銀河が合体と衝突を繰り返してできたと考えられている。今回発見された銀河は、大銀河を作るもととなった「最初の」銀河であり、同時に、光が宇宙を伝わるようになった「暗黒時代の終わり」を告げる「最初の」銀河なのである。