南米ペルー電波望遠鏡の建設計画
【2004年9月29日 国立天文台 アストロ・トピックス(50)】
南米ペルーのアンデス山脈にある高原都市ワンカイヨ(海抜3370m)は、国立天文台の野辺山観測所がある長野県野辺山高原のような美しい山々に囲まれた谷間にあります。この郊外には既に役割を終え、休止中の衛星通信用の32mパラボラアンテナがあります。これを電波望遠鏡として活用しようという計画がペルーと日本の研究者により進められています。
このアンテナは2004年中にペルー民間電話会社からペルー地球物理観測所(IGP)へ移管される予定です。現在はIGPおよびペルー大学関係者と日本の国立天文台および大学関係者とが協力して、有力な電波望遠鏡への改造が検討されています。これにより南半球では数少ない大型望遠鏡の1つとして利用する事が可能になります。予算上の制約から、まずは必要最低限の設備投資と改修を行い、電波天文観測が可能な状態にします。それと並行して観測・運用グループの組織・育成を行います。単一望遠鏡として1つの波長帯での観測実績を出した後、次のステップとして、VLBI観測(世界各地のアンテナを使用した同時観測をもとに行う高分解能電磁マッピング)や多波長帯観測のための受信器等の整備拡張を行う予定です。
国立天文台では望遠鏡の改造に必要な機材の支援を行う予定ですが、ペルー側で負担することになっているアンテナ局の運用経費(年間約5万ドル、日本円にしておおよそ550万円)の目処はまだたたない状況です。
計画の中心人物であるIGPの石塚睦(いしつかむつみ)博士は47年前に日本よりペルーへ渡り、天文学の定着に努力し続けてきた人です。博士はペルーを取り巻く現状について次のように心配しています。
「学問を育てるには相当な経費と努力が必要になる。このような観測設備を新設するならば最低でも10〜20億円が必要となる。32m級の電波望遠鏡を無償で譲り受けられるチャンスを見逃したら一生後悔するだろう、せっかくペルーに電波天文学が生まれようとしているのに…」。
私たち日本の有志としても、是非ともペルーが世界の天文学に参加するこの計画を実現させたいと考えております。石塚博士のペルーにおける長年の情熱を応援すると共に、またこの新たなチャンスに対して皆様方の暖かなご支援をお願いいたします。
ペルーの電波望遠鏡を支援する会代表 井上 允(国立天文台)
(アストロアーツ注)支援についての詳細は、以下のリリース元、リンク先をご覧ください。