国立天文台のALMA(アルマ)計画の近況:日米欧がALMA協定書に署名完了
【2004年9月30日 国立天文台 アストロ・トピックス(51)】
日本(自然科学研究機構)・北アメリカ(アメリカ合衆国国立科学財団)・ヨーロッパ(ヨーロッパ南天天文台)は14日、ALMAを共同で建設する協定書への署名を完了しました。
署名は持ち回り方式で行われ、まず8月25日にドイツ連邦のガーヒング(Garching)でCatherine Cesarsky(カトリーヌ セザルスキー)ヨーロッパ南天天文台長が、次いで9月8日にアメリカ合衆国ワシントンD.C.でArden L. Bement(アーデン L. ビメント)アメリカ合衆国国立科学財団長官代行が署名し、そして9月14日に東京で志村令郎(しむら よしろう)自然科学研究機構長が署名することで協定が成立しました。
本協定書の署名完了により、日本が参加して、ALMAを3年前に日米欧3者で構想した本当に強力な観測装置として建設するための、レールが敷かれました。
ここで改めてALMA計画の経緯を振り返ってみます。ALMAは元々3つの大型計画が統合されたものです。
その前身となった日本の「大型ミリ波サブミリ波干渉計(LMSA)」、アメリカの「ミリ波干渉計 (MMA)」、ヨーロッパの「大型南天干渉計(LSA)」は、日本・北アメリカ・ヨーロッパにおいてそれぞれ最優先の天文学計画として位置づけられてきました。
2001年4月には日米欧の代表が東京で会談し、この3計画をALMA計画としてひとつに統合し、チリにおいて建設・運用する方向を目指す決議書に署名しました。
先んじて建設予算を獲得した米欧は2002年から、直径12mのアンテナ64基や4種類の受信機群などからなる基本部分の共同建設に合意し、アメリカとヨーロッパ南天天文台加盟国に加え、カナダとスペインもこの計画に加わることとなりました。
国立天文台も正式参加に向けて2002年度から設計開発を行ってきましたが、いよいよ今年度から自然科学研究機構 国立天文台として建設予算を獲得し、その貢献内容の全体についての合意が得られました。
日本が北米・ヨーロッパに次ぐ3番目のパートナーとして参加することとなり、チリもまたホスト国として参加しているため、この計画は基礎科学研究の分野でもまだ数少ない真のグローバルな計画となったといえます。
日本はALMAを構成する装置のうち、アタカマ コンパクト アレイ(ACA)と呼ば れる直径12mのアンテナ4基と直径7mのアンテナ12基からなるアンテナ群と分光相関器、サブミリ波を中心とする3種類の受信機群などの装置を担当します。
ACAシステムは銀河や原始惑星系円盤などの広がった構造を忠実に描き出すのに用いられ、ALMAで得られる天体画像の信頼性を大幅に向上させます。
追加される3種類の受信機群は、最高の周波数帯を含む新たな周波数帯での観測を可能にし、さまざまな星間分子の探査や、さまざまな赤方偏移の遠方天体の観測を可能にします。
これらの装置は他の装置同様にALMA全体の中に組み込まれ、世界の研究者に新たな観測可能性を提供することになります。
また、日本の研究者はこれにより、日本の追加分だけでなくALMA全体を用いた観測の機会を得ることになります。
今後は速やかに日本担当分の建設・開発を進め、2007年半ば頃から少数のアンテナを使用して部分的な運用を開始し、2012年に全面運用を開始することを予定しています。今後ともご支援をよろしくお願いいたします。