太陽は地球のまわりを回っている!?

【2004年10月21日 国立天文台 アストロ・トピックス(58)

小学4〜6年生の約4割は「太陽は地球のまわりを回っている」と考えていることや、半数以上が月の満ち欠けの理由を理解していないこと、また、日没の方位が西であることの理解が6割〜7割程度であるなど、基本的な天文知識の理解が不足している実態が明らかになりました。

国立天文台の縣秀彦(あがたひでひこ)さん等の研究グループは2001年6月〜2004年6月に、全国8都道府県(14校)の小学4年生から中学1年生合わせて1692人に、理科の好き嫌いや天文の知識について3種類のアンケート調査を実施しました。

そのうち北海道、長野県、福井県、大阪府の計4校348人を対象に、太陽と地球の関係の理解を「地球は太陽のまわりを回っている」、「太陽は地球のまわりを回っている」の2つの文章から正しいほうを選ばせたところ、前者を選んだ児童は56パーセントにとどまり、42パーセントは「太陽は地球のまわりを回っている」を選択しました。

また「人工衛星と同じように地球の周りを回っている天体は?」との問いに、月と回答した児童は39パーセントにとどまり、他の選択肢の火星が27パーセント、太陽が24パーセントでした。

茨城県の4校733人に対しては、太陽と地球の関係を文章ではなく図に示して選ばせたところ、40パーセントの児童が地球の周りを太陽が回っている図を選択しました。

これらの結果からおよそ4〜5割の児童が地球中心の宇宙像をえがいていると考えられます。

一方、6都道府県の計720人に月の満ち欠けについて聞いたところ、「地球から見て太陽と月の位置関係が変わるから」と正しい解答を選んだのは47パーセントと半数以下でした。

また、同調査で回答分布で調査地域によって有意な差が生じた質問に、「日が沈む方位はどれですか?」があります。選択肢として「南」、「東」、「西」、「わからない」を用意しました。日没の方位が西であることの正解者は全体で73パーセントですが、理解に地域差がある傾向がみられました。調査結果には都市部の学校ほど正解率が低くなる傾向が見られ、日没や日の出を見ることが日常体験として失われている影響があると考えられます。

2002年施行の現行学習指導要領では、地上から見た太陽、月、星の動きの観察といった天動説的な内容しか扱っていないため、地球が丸いことも、自転していることも、公転していることも小学校理科で習うことがありません。

「次回の改定時には太陽、月、地球が球体であることや、その全体像も教えるべきで、地上から見た天体の動きと宇宙からみた地球の動きの関係にふれるようにすべき」と研究グループは述べています。

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