天の川銀河の中心に第2のブラックホールを発見

【2004年11月19日 Gemini Observatory

フランスとアメリカの専門家からなる研究チームが、われわれの天の川銀河の中心に第2のブラックホールを発見した。これは、すでに発見されている大質量ブラックホールとはまったく別の天体であり、質量は太陽の約1300倍と推測されている。

(波面補償光学による天の川銀河の中心の画像)

波面補償光学による天の川銀河の中心の画像。クリックで拡大(提供:Gemini Observatory)

第2のブラックホールの存在は、われわれの天の川銀河の中心にある赤外線源IRS 13に存在する星団の観測から明らかにされた。IRS 13の東側にあたるIRS 13Eという星団に発見されたのは、今までに検知されたことのない天体の存在だ。この天体に関して、ジェミニ望遠鏡によって得られたデータとハッブル宇宙望遠鏡やチャンドラX線観測衛星、さらにCFHT(Canada-France-Hawaii Telescope)などの他の望遠鏡のデータも利用された結果、すでに発見されている銀河系中心の巨大ブラックホール(太陽の約400万倍の質量)と同種の天体であること示されたのである。

7つの星が存在するIRS 13Eは、ひじょうにコンパクトな星団だ。その星々の動きから、星がIRS 13Eの中心にある大質量の天体によって引き寄せられていることが示された。星団のサイズから軌道半径が求められ、視線速度などが観測された結果、ここに存在するブラックホールの質量が太陽の1300倍程度であることが計算されたのである。

同チームでは、天の川銀河の中心にあるSgr A*(いて座A*)に向かって回転しながら落ち込んでいるIRS 13Eについて、以前は天の川銀河の中心から離れたところに位置していたため、天の川銀河の中心の巨大ブラックホールによる重力の影響を受けることなく星団に星が形成されたと推測している。さらにこの星団は、より大きな星団の核の残骸と考えられている。このような理論から、銀河系の中心付近には、銀河中心に潜むブラックホールの重力によって星団から引きはがされた未発見の大質量星が存在しているのではないかと推測されている。