すばる、大質量原始星における星周円盤の発見

【2005年9月2日 国立天文台 アストロ・トピックス(137)

日本・中国・英国の研究者からなるチーム(注)は、すばる望遠鏡を用いた観測により、オリオン座の星雲内にある若い大質量星のまわりに「星周円盤」が存在することを発見しました。

(大質量星のまわりの星周円盤の想像図)

大質量星のまわりの星周円盤の想像図。クリックで拡大(提供:国立天文台)

太陽よりも重い、大質量星がどのように生まれるのか、実はまだよくわかっていません。いくつかの小さな星が合体して大質量星となるという「合体説」や、重力収縮で生まれた円盤状構造から、どんどん中心に物質が降り積もっていく「降着説」などが考えられています。しかし、これまでは観測的な証拠が乏しく、決定打がありませんでした。というのも、大質量星は数が少なく、また太陽から比較的遠くにあるために、星の周辺構造を細かく見分けることが難しかったためです。

すばる望遠鏡では、大気揺らぎをリアルタイムで補正する補償光学を用いて、これまでになく詳細に大質量星の周囲を調べられるようになりました。研究チームは、すばる望遠鏡に装着された赤外線カメラ(CIAO)を用いて、このテクニックを利用しながら、赤外線の偏光(波としての光の偏りの性質)を測定することで、オリオン星雲の中にあるBN(ビー・エヌ)天体と呼ばれる若い大質量星の観測を行いました。その結果、この星の周りで、円盤の存在を示唆する結果が得られたのです。これは、これまで円盤が確認された原始星のなかでは最も質量の大きな例(太陽質量の約7倍)です。

この発見によって、大質量星も太陽と同じように、物質の降り積もりによって生まれていることが明らかになりました。この結果は、降着説の証拠を示すと同時に、高解像度の赤外線による偏光観測という手法が大質量星の「星周円盤」の解明に有効なことを示しており、今後、さらに大質量(太陽の10倍以上)の原始星の解明が期待されます。今回の研究成果は科学雑誌ネイチャーの9月1日号に掲載されます。

(注): 国立天文台、中国紫金山天文台、英国ハートフォードシャー大学の研究者によるチームです。

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