誕生! 東アジア中核天文台連合(EACOA)

【2005年9月26日 国立天文台 アストロ・トピックス(143)

平成17年9月21日に、東アジア各地域を代表する中核天文台である、中国科学院国家天文台(中国)、自然科学研究機構国立天文台(日本)、韓国天文宇宙科学研究所(韓国)、台湾中央研究院天文及天文物理研究所(台湾)の4機関の代表が国立天文台三鷹本部に集まり、東アジア中核天文台連合(East Asia Core Observatories Association:EACOA)の調印式が行われました。

長年、研究者レベルで積み上げられてきた東アジア天文学会議(EAMA:East Asian Meeting on Astronomy)などの交流の上に立ち、日本、中国、韓国、台湾の地域をそれぞれ代表する4つの中核天文台が連携組織EACOAを形成して、東アジア地域の天文学協力を継続的に話し合い、東アジア地域の天文学協力を長期的・組織的に進めてゆくことが調印式で合意されました。

東アジア地域、特に日本、中国、韓国、それに台湾における天文学は近年急速に立ち上がりつつあります。しかし残念ながら、米欧との個別協力や交流に比べ、東アジア地域内の相互協力は、さまざまな文化を共有する一衣帯水の地域としてあるべき状況からはまだほど遠いのが現状です。EACOAは今回締結する合意文書にのっとり、代表者による定期的会合を行い、各地域の天文学コミュニティや研究者レベルの交流活動と密接に連携しつつ、東アジア地域におけるより高度な天文学協力体制の構築を視野に入れて活動を進めます。

調印された合意書では、EACOAは4機関の協力を通じて東アジア地域に強力で先進的な天文学を構築することをめざし、以下の活動を推進することをうたっています。

    (1)東アジア地域における天文学協力の推進
    (2)東アジア地域における天文学研究、装置及び技術開発、
       望遠鏡の建設などの共同プロジェクトの推進
    (3)東アジア地域における望遠鏡など各種観測資源の交換、共同利用
    (4)天文学研究者、とりわけ若手研究者や学生の交換、交流
    (5)東アジア天文学会議(EAMA)など東アジア地域の天文学の共同・
       交流の推進をめざす研究者や組織の活動との連携、支援
    (6)東アジアにおける将来の連携方向についての議論、検討など
  

EACOAは少なくとも年一回の台長・所長会議などを通じ、上記事項を含めた連携について広くかつ具体的に協議・協力することとしています。具体的にはすでに、次のような研究協力が遂行中です。

  • 日本のVERA(国立天文台)と大学連合(北大、岐阜大、山口大、鹿児島大等)VLBIネットワーク、建設中の韓国VLBIネット(KVN)、中国の上海天文台などを結ぶ東アジアVLBI(超長距離電波干渉計)ネットワークの形成。
  • チリに建設中の大型ミリ波サブミリ波干渉計「アルマ」に台湾が日本を通じて参加。「アルマ東アジア地域センター」に向けた東アジアアルマワーキンググループを結成、シンポジウム等を各地域で開催。
  • JAXA-ISASが進める赤外線観測衛星Astro-Fは、韓国とソフトウエアで協力。
  • 2メートル クラス中型望遠鏡コンソーシアムを結成し、太陽系外惑星探査などでの交流、望遠鏡時間での協力、共同研究を推進。
  • 昨年よりEAMAのもとで「東アジア若手天文学会議(EAYAM: Young Astronomers Meeting)」を組織。前回は一昨年に台北で、次回は来年2月に日本(清里)で開催。

今後、東アジアにおける科学分野での共同は大きく広がると思われますが、過去10数年間積み上げられて来た研究者レベルでの天文学協力をさらに質的・組織的に大きく発展させ、また欧州南天文台(ESO)などをモデルとした将来の「東アジア天文台」構想などを進めるためにも、機関間協力組織EACOAにかかる期待は大きいと言えましょう。

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