反復新星「へびつかい座RS」の21年ぶりの増光を
愛媛の成見さん、群馬の金井さんが検出
【2006年2月15日 VSOLJニュース(150) / 国立天文台 アストロ・トピックス(186)】
(VSOLJニュース)
新星は、近くを回り合う連星の一方が白色矮星であるときに、もうひとつの星から白色矮星表面にガスが降り積もって、それが核爆発を起こしたものです。したがって、新星というのは本質的に繰り返す現象なのですが、繰り返し周期は天体によって違い、長いものだと数万年以上しないと再び爆発しないと考えられています。一方、頻繁なものでは10年ほどの間隔で増光を繰り返すこともあり、2回以上明るくなったところが観測された新星は「反復新星」(再発新星、再帰新星などとも言う)と呼ばれます。反復新星は、これまでに10例弱しか知られていない、かなり貴重な天体です。
この反復新星のうち、肉眼で見えるほど明るくなるものは、かんむり座Tとへびつかい座RSの2つしかありません。このたび、へびつかい座RSが、21年ぶりとなる増光を迎えました。
増光を世界に先駆けて捉えたのは、愛媛県の成見博秋(なるみひろあき)さんと、群馬県の金井清高(かないきよたか)さんです。12日朝(日本時)にはまだ11等ほどだったこの天体が、13日の朝、12.83日世界時には、4.5等という、肉眼でも見える明るさになっていたのです。
これまでに報告されている明るさの推移は以下の通りです。
2006年2月 (日, 世界時) | 明るさ(等) | 観測者 |
---|---|---|
9.826 | 10.5 | 成見 |
11.862 | 11.0 | 金井 |
12.829 | 4.5 | 成見 |
12.847 | 4.6 | 金井 |
12.854 | 4.5 | 金井 |
12.862 | 4.4 | 金井 |
12.868 | 4.4 | 金井 |
12.875 | 4.4 | 金井 |
13.163 | 4.8 | W. Renz (ドイツ) |
13.181 | 4.8 | W. Renz |
13.214 | 4.8 | W. Renz |
13.235 | 4.8 | W. Renz |
観測者の間で値に系統的な差がある可能性が高いので、へびつかい座RSが今増光中なのか、それとも減光中なのかはまだ確言できませんが、過去の増光時の光度変化からすると、現在がもっとも明るい時期で、これから急速に暗くなっていく(0.1等/日くらい)ものと思われます。明け方の見えにくい位置にありますが、ここ数日は肉眼でも捉えられるほどの明るさで推移するので、このチャンスを逃さないよう観測すると面白いでしょう。
なお、成見さんはベテランの変光星観測者で、第1回日本天文学会天文功労賞を「変光星の目視測光25万点」の功績で受賞されています。また、やはり反復新星であるさそり座Uの増光(1979年)を捉えたこともあります。金井さんは、やはりベテランの天体観測者で、1970年には大道-藤川彗星(C/1970 B1(Daido-Fujikawa))の世界最初の発見者として、日本天文学会天体発見賞を受賞されています。両氏の長年の観測とその成果には頭が下がるばかりです。
(国立天文台アストロ・トピックス)
愛知県稲沢市の広沢憲治(ひろさわけんじ)さんから、国立天文台広報室(新天体)に届いた情報によりますと、群馬県伊勢崎市の金井清高(かないきよたか)さんと、愛媛県喜多郡の成見博秋(なるみひろあき)さんのお二方が、へびつかい座にある反復新星、RS星(RS Oph)が増光中であることを観測から確認しました。この情報は広沢さんによって、国際天文学連合に報告されました。
その位置とお二方が観測された確認時間(世界時間)と明るさは、以下のとおりです。
赤経: 17時50分13.2秒 赤緯: -6度42分28.4秒 (2000年分点) 日 時 等級(実視) 観測者 2月12日19時54分 4.5 M.Narumi 2月12日20時20分 4.6 K.Kanai 2月12日20時30分 4.5 K.Kanai 2月12日20時41分 4.4 K.Kanai
新星とは、数日のうちに10等星近くも明るくなり、その後緩やかに減光し、爆発前の状態にもどるものをいい、新しく星が誕生するものではありません。近くを回り合う連星の一方が白色矮星であるときに、もうひとつの星から白色矮星表面にガスが降り積もって、それが核爆発を起こしたものです。新星というのは本質的に繰り返す現象なのですが、繰り返し周期は天体によって違い、長いものだと数万年以上あるいは再び爆発することがないものもあると考えられています。一方、頻繁なものでは10年ほどの間隔で増光を繰り返すこともあり、2回以上明るくなる現象が捉えられたものは「反復新星」あるいは再発新星、再帰新星などともと呼ばれています。反復新星は、これまでに10例弱しか知られていない、かなり貴重な天体です。この反復新星のうち、肉眼で見えるほど明るくなるものは、かんむり座Tとへびつかい座RSの2つしかありません。今回明るくなったのは、後者です。12日朝(日本時)にはまだ11等ほどだったのが、13日朝には、上記の二人のアマチュア天文家によって4.5等と報告されています。今回の新星は1898年に出現し、過去に4回、最近では1985年に爆発を起こしています。
九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんによれば、「観測者の間で値に系統的な差がある可能性が高いので、へびつかい座RSが今増光中なのか、それとも減光中なのかはまだ確言できないが、過去の増光時の光度変化からすると、現在がもっとも明るい時期で、これから一日あたり0.1等の割合で、暗くなっていくのではないか。明け方の見えにくい位置にあるが、ここ数日は肉眼でも捉えられるほどの明るさで推移するので、このチャンスを逃さないよう観測すると面白いだろう」と述べています。
成見さんはベテランの変光星観測者で、「変光星の目視測光25万点」の功績により、第1回日本天文学会天文功労賞を受賞されています。また、やはり反復新星であるさそり座Uの増光(1979年)を捉えたこともあります。金井さんもベテランの天体観測者で、1970年には大道-藤川彗星(C/1970 B1(Daido-Fujikawa))の世界最初の発見者として、日本天文学会天体発見賞を受賞されています。このような貴重な現象を、いち早く発見する日本のアマチュア天文家のレベルの高さは世界に誇って良いでしょう。