2006年3月29日エジプトでの皆既日食

【2006年3月29日 国立天文台 アストロ・トピックス(197)

2006年3月29日、アフリカ南西部から北東トルコで皆既日食を見ることができます。残念ながら、日本国内では部分日食でさえ見ることができませんが、皆既日食のライブ中継映像をご自宅のインターネットでご覧になることができます。また、今回は「Eclipse Cafe (エクリプス・カフェ)2006」と銘打って、ライブ中継映像を皆様にお見せする科学館や公開天文台もあります。

日食とは、「太陽-月-地球」と並んだ際に月が太陽を隠してしまう現象です。そのため日食は、太陽―月―地球が一直線に並ぶ新月の時に起こります。もちろん、新月のたびに日食が起こるわけではありません。太陽の通り道である黄道と月の通り道である白道が約5度傾いているために、黄道と白道の交点で新月にならないと、太陽と月が重ならないためです。

日食の時、地球上には月の影が落ちていることになります。地表での月の影のようすは、地球と月、地球と太陽の距離や位置関係によって変わります。どのようなパターンがあるでしょうか。まず、月の影によって太陽が全く見えない本影(ほんえい)と、太陽の一部が見える半影(はんえい)があります。本影は円錐形の領域です。地表の本影の幅は数百キロメートルしかなく、その影は月の日周運動によって地表を動きます。日食を見ることができる地域が 限られたり、日食の時間が地域で異なったりするのはこのためです。

さて、太陽の周りを回る地球の軌道が完全な円ではないので、地球−太陽間の距離が少しずつ変化します。さらに、地球の周りを回る月の軌道も完全な円ではなく、地球-月間の距離も変化します。二つの変化が組み合わさって、本影の先端が地表に届く場合と、届かない場合ができます。本影が地表に届く場合は、その本影の中に入ると太陽が月に完全に隠されます。この場合が「皆既(かいき)日食」です。

また、本影が地表に届かない場合、上空で一点に集束した影は再び広がり、擬本影(ぎほんえい)を作ります。この擬本影の中に入ると、月が地表から遠いために小さく見え、太陽を隠しきれません。月の周りに、明るい太陽がリング状にはみ出して見えることになります。これが「金環日食(きんかんにっしょく)」です。

皆既日食の場合も金環日食の場合も、本影や擬本影の周りには半影ができます。この半影の中に入ると、太陽の一部分が月に隠されて見えます。これを「部分日食」と言います。部分日食は、皆既や金環が見られる地域の周囲の、かなり広い地域で見ることが出来ます。このようにして、太陽−月−地球の位置関係や距離によって、私達は様々なパターンの日食をみることができるのです。

2006年3月29日の皆既日食はエジプト・サルームの場合、おおよそ以下のような時間で現象が進みます。

エジプト時間    日本時間
    部分日食始  11時20分     18時20分
    皆既日食始  12時38分     19時38分
    皆既日食終  12時42分     19時42分
    部分日食終  14時00分     21時00分

また、トルコ・アンタルヤ近郊では以下のように現象が進みます。
           トルコ時間    日本時間
    部分日食始  11時36分     18時36分
    皆既日食始  12時53分     19時53分
    皆既日食終  12時56分     19時56分
    部分日食終  14時12分     21時12分

天文現象などをインターネットで中継している非営利団体「ライブ!ユニバース」は、今回の皆既日食をインターネットで中継するプロジェクト「LIVE!ECLIPSE 2006」を行います。日本時間18時30頃から20時30分頃までの予定です。(中継URL:http://www.live-eclipse.org/)

また、自然科学研究機構国立天文台は、日本科学技術振興機構の「研究者情報発信活動推進モデル事業」の委託を受けて、日食観測隊の遠征先であるトルコ・アドラサンより「Eclipse Cafe 2006」を実施します。このイベントは、大学、科学館および公開天文台と観測地との間をインターネットTV会議でつないでのサイエンス・カフェです。日時は3月29日(水)の18時〜20時30分、参加会場は以下の通りです。みなさんもお近くの会場で皆既日食映像を楽しみながらカフェしませんか?

【日食映像の中継+トルコからのTV会議】

日時:2006年3月29日(水)18時〜20時30分(予定)

【日食映像の中継】

(注:会場によっては映像の視聴のみのイベントとなります。詳細は各会場にお問い合わせください。)

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