宇宙人の声を聞く方法
【2007年1月10日 Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics】
一歩進んだ地球外知的生命体探しの方法が提案された。宇宙人がわれわれを意識してメッセージを送っているという前提に立たずに、彼らの惑星内で行われている通信を検出してみようというものだ。オーストラリアで建設が進められている電波干渉計を使えば、およそ1000個の近傍恒星について「宇宙人探し」が可能になるという。
「間もなく、われわれは天の川銀河に住む他の住人からのシグナルを傍受できるかもしれません。そうなれば、まさに人類史上初のことになりますね」とハーバード・スミソニアン天体物理センターの理論学者のAvi Loeb氏は話している。Loeb氏らはアメリカ天文学会の会合で新しい「宇宙人探し」の方法について発表した。
地球外知的生命体探しといえば世界中で知られているSETIがその代名詞となっている。このプロジェクトでは、世界中から参加者を募って、ビーコンのようなシグナルの探査を実施している。しかし、現在までのところ高度に発達した生命体からの電波の検出には成功していない。Avi Loeb氏らによれば、SETIのプロジェクトが探しているような、はっきりと目的をもって宇宙へ発せられるような電波は実は存在しないのかもしれないため、逆に偶然漏れるようにして発せられたシグナルを調査する方法を提唱している。
SETIでは、地球上の信号および宇宙からの天然の電磁波による干渉を避けるために、主に1ギガヘルツ以上の波長しか調べられていない。一方、現在オーストラリアで建設中のMWA電波干渉計は、80から300メガヘルツの間の波長を調べるよう設計されている。つまり、地球上で現在使用されているレベルの波長だけを検知する仕組みなのだ。地球上では、軍事レーダーがもっとも強力な通信用電波で、それに続くのがテレビ、FMラジオとなる。もしも、これらと同様のシグナルが地球の近傍約30光年の範囲(そこには約1000個の恒星が存在している)から発せられれば、MWA電波干渉計のLFDは、技術上それを検出することができるのだ。より強い電波であれば、もちろんもっと遠くからのものもとらえることができる。また、将来建設が計画されている、口径数千キロメートルの巨大無線望遠鏡SKAによる観測では、さらにその10倍遠く(1億個の恒星が含まれる範囲)まで調べることができるようになる。そして、シグナルがひとたび検出されれば、繰り返し追加観測を行い、その発信元である惑星までの距離や惑星の自転周期、さらにはその表面の温度などを調べることで、液体の水が存在するかどうかなどの情報ももたらされることになる。
MWA電波干渉計のLFD自体は、遠方の若かった頃の宇宙を調べるための観測機器だが、今までよりも大きな範囲の空をより長い時間、異なった波長で地球外知的生命体探しにつながる観測が行えることから、SETIプロジェクトの研究家も、将来この機器を使用することになるかもしれない。