肉眼等級にまで増光したさそり座新星

【2007年2月16日 アストロアーツ】

2月4日に発見されたさそり座の新星が、肉眼で見える明るさまで増光しました。現在4等台で、明け方に南東の空で見えています。この新星は明るいだけでなく、増光のしかたが特殊である点も注目されています。


(V1280 Scoの光度曲線)

V1280 Scoの光度曲線。クリックで拡大(提供:ダイニックアストロパーク天究館)

さそり座新星(V1280 Sco)は、2月4日に中村祐二さんと櫻井幸夫さんによって9等台で発見された新星ですが、その後も日ごとに増光し、2月16日(日本時間)現在では4.2等と肉眼でも観測できる明るさになっています。過去の画像の調査ではこの位置には19等より明るい天体は見当たらないことから、今回の増光は15等以上のたいへんに増光幅の大きな新星ということになります。古典的な新星の場合は爆発から数日で急激に明るくなり極大に達しますが、今回は発見から10日以上が経ってもまだ増光を続けており、いわゆる通常の古典的新星とは異なった様相を見せています。

このような特殊な増光を見せた新星としては1995年に出現したカシオペア座新星(V723 Cas)などがあります。V723 Casは10等で発見された後、4か月かけて8等にまでゆっくりと増光し、その後突然7等に増光しました。その後も何度かの小増光を見せながらゆっくりと減光していきました。新星の中にはこのような遅い新星(slow nova)と呼ばれるものもあります。基本的に軽い白色矮星の表面で核爆発が起きた場合に、このようなslow novaになるとみられています。ただ今回のように大きな増光幅をもったslow novaはあまり例がなく、今後どのような変化を見せるかとても興味深いところです。

(注)このニュースは、ダイニックアストロパーク天究館の高橋進さんからいただいた原稿を元に作成しました。


「さそり座新星」の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

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