氷の摩擦で解明か、衛星エンケラドスの噴出メカニズム
【2007年5月28日 UC Santa Cruz News】
土星の衛星エンケラドスの南極には大きなひび割れが存在し、蒸気や氷の結晶が火山のように噴出している。この噴出は、土星の重力に引っ張られて地表の裂け目に摩擦が生じたためであるとする研究成果が発表された。
土星の衛星エンケラドスに蒸気や氷の結晶などを噴出する氷の火山が見つかったのは、約1年前のことだ。発見当時は、エンケラドスの表面から浅いところに液体の水が存在し、間欠泉のように吹き出しているのではないかと考えられた。
カリフォルニア大学で地球・惑星科学を専門としているFrancis Nimmo准教授らのチームは、噴出のメカニズムについて研究した。発表によれば、エンケラドスの表面を覆っているのは厚さ数キロメートルから数十キロメートルの氷で、液体の海があるとすればその下だという。氷の層が土星の重力に引っ張られた影響で、ひび割れの断面が摩擦を起こし、その摩擦熱で水蒸気や氷のかけらが噴出しているというのだ。氷の下が岩盤である場合には、氷が動くとは考えられない。
また、研究チームでは、こすれ合うひび割れから発生する熱について計算を行い、その結果から氷が(液体にならず)直接気体になること(昇華)は可能だと結論づけている。似たような現象は彗星にも見られる。彗星は水蒸気などのガスをちりとともに宇宙空間へ放出している。