太陽が4つの世界? 4重連星の中に惑星の気配
【2007年8月7日 Spitzer Newsroom】
われわれの太陽系に存在する恒星はただ1つ、太陽だけだ。しかし、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーの観測によれば、恒星が4つも存在する惑星系があるかもしれない。とはいえ、恒星が多い分、惑星があるかないかは簡単には判断できない。
2つの太陽の周りを、惑星が回る。少し離れたところに、太陽があと2つある。こんなややこしい光景が見られるかもしれないのは、コップ座の方向150光年の距離にある4重連星「HD 98800」だ。
HD 98800の4つの恒星は2組のペアにわかれている。ペアはかなり接近しているが、ペアとペアの間は50天文単位(1天文単位は太陽から地球の距離)、太陽系で言えば太陽と冥王星の平均距離ほど離れている。
片方のペアである「HD 98800B」は、ちりの円盤に囲まれていることが知られていた。米カリフォルニア大学のElise Furlan博士が率いる研究チームは、スピッツァーを使って円盤を詳細に調べ、円盤が2つの領域に分かれていることを突きとめた。それによれば、中心の連星(ペア)から5.9天文単位(太陽系で言えば木星の軌道付近)には、小惑星や彗星からなるベルトがあり、中心から1.5〜2天文単位(太陽系で言えば火星の軌道付近)には、細かい粒子からなるベルトがある。
惑星は、細かな粒子が合体を繰り返すことで成長する。最終的には巨大な岩石どうしが衝突することで、地球のような岩石惑星や木星のようなガス惑星の中心核が形成されるのだが、取り残された岩石は小惑星や彗星となる。さらに、衝突によって新たに放出されるちりもある。スピッツァーの赤外線の目は、ちりの分布を調べるときにとりわけ威力を発揮する。
HD 98800Bの外側のベルトでは岩石どうしの衝突が起き、飛び散ったちりは徐々に内側へと移動するはずだ。内側のベルトとの間にすき間が空いていることは、惑星が存在する証拠となる。「惑星は宇宙の掃除機みたいなもので、中心星の周りを回りながら、通り道に存在するちりを取り除いてしまうのです」とFurlan博士は語る。
その一方で、慎重な見方も示した。
「しかし、今回のケースでは50天文単位離れた(もう片方の)ペアの存在を考慮しなければなりません。円盤中のちりは(ペアの重力が引き起こす)時間とともに変動する複雑な力に影響されるでしょうから、惑星の存在は憶測にすぎません」
「恒星の多くは連星を成して誕生するのですから、若い星をとりまく円盤の進化や惑星の形成は、太陽系のような単純なケースと違い、もっと複雑であることを認識しなければなりません」