チャンドラが明かした宇宙のキャノンボール

【2007年12月3日 Chandra Photo Album

NASAのX線天文衛星チャンドラによる観測で、超新星残骸「とも座A」の中性子星「RX J0822-4300」が、宇宙でもっとも高速の天体の1つといえるほどの速度で移動していることが明らかとなった。


(超新星残骸「とも座A」と中性子星「RX J0822-4300」の画像)

X線と可視光による超新星残骸「とも座A」の合成画像、(右下)中性子星「RX J0822-4300」の画像(1999年と2005年の観測結果を合わせたもの)。クリックで拡大(提供:(チャンドラによるX線データ)NASA/CXC/Middlebury College/F.Winkler et al;(ローサットX線観測衛星によるX線データ)NASA/GSFC/S.Snowden et al.;(可視光)NOAO/AURA/NSF/Middlebury College/F.Winkler)

とも座Aは、約3700年前に大質量星が起こした爆発の残骸と考えられている。とも座Aには爆発で作られた中性子星のRX J0822-4300が存在している。中性子星とは、太陽の質量の8〜30倍の星が超新星爆発を起こしたあとにできる高密度の天体だ。

NASAのX線天文衛星チャンドラは、1999年と2005年にRX J0822-4300を観測した。そして、この中性子星の移動速度を調べるために、2回の観測データが重ね合わせられた。

その結果、RX J0822-4300の速度は時速480万キロメートル以上であることが明らかになった。この速度を保ち続ければ、数百万年後には天の川からぬけていってしまうと考えられている。

また、とも座Aの画像では、爆発の残骸である酸素の塊(紫色の擬似カラー)を画像の左上に見ることができる。酸素の塊と中性子星それぞれから伸びる白い矢印は、今後1000年で移動すると思われる距離とその方向を示している。

この矢印からもわかるように、とも座Aでは、爆発で吹き飛ばされた残骸の大部分と中性子星とが、互いにほぼ逆の方向へ移動していることも明らかになっている。