MISAOプロジェクト、クエーサーの劇的な変光を発見

【2008年2月15日 吉田誠一/MISAOプロジェクト

アマチュアが撮影したCCD画像から、クエーサーの明るさが変わっていることが発見された。日本のアマチュアはついに、70億光年を超える遠く暗いクエーサーで起こった天体現象をも発見したのだ。星ナビの人気執筆者でもある吉田誠一氏を中心とした「MISAOプロジェクト」の快挙である。


(QSO B0133+47の変光をとらえた画像)

MISAOプロジェクトが検査した画像。クエーサー QSO B0133+47(矢印)は2007年11月11日の画像(左下)で明るく写っていることがわかる(撮影:大倉信雄氏、中島洋一郎氏/ニュース掲載用に編集部にてレイアウト変更)

クエーサーというと遠方の活動銀河の話で、アマチュアには手の届かない対象かと思われるかもしれないが、そうでもない。

アマチュアが撮影したCCD画像を集めて新変光星などを捜索しているMISAOプロジェクトは、アンドロメダ座の足元に位置するクエーサーQSO B0133+47が、可視光でも劇的に明るさを変える「可視激変光クエーサー」であることを発見した(2008年2月10日発表)。可視激変光クエーサーとは、ジェットをほぼ真正面から見ていると考えられる「ブレーザー」と呼ばれる天体の一種だ。MISAOプロジェクトで見つけた新変光星としては1436個目であるが、クエーサーの変光をとらえたのはこれが初めて。変光を発見したのはMISAOプロジェクトを主宰している吉田誠一氏(神奈川県)。発見者は吉田氏と、画像を撮影した中島洋一郎氏(岡山県)、大倉信雄氏(岡山県)の3名である。

MISAOプロジェクトでは、画像上の星の位置と光度を検査するシステムを開発し、変光している星の候補を自動的にピックアップしている。この天体画像自動検査システムにより、クエーサーQSO B0133+47が2007年11月11日に14等まで明るくなっていたことが検出された。吉田氏は、2000年から2007年までのMISAOプロジェクトの過去の画像を調べ、このクエーサーが変光しているという事実を確認した。さらに、このクエーサーの過去の明るさについてDSS(Digitized Sky Survey)の乾板を調べ、1993年と1995年にも小規模な増光があったことや、MISAOプロジェクトがとらえた14等という明るさはこのクエーサーの史上もっとも明るい姿であったことも突き止めた。このクエーサーの距離は70億光年を超える(赤方偏移z=0.859)が、これほど遠方に存在しながら14等という明るさに達したのは驚異的だ。可視光でこれほど大きく変光するクエーサーというのも珍しい。

クエーサーの位置とMISAOプロジェクトによる観測データは下記のとおり。

MisV1436(QSO B0133+47)
    赤経  01時36分58.63秒
    赤緯 +47度51分29.0 秒(2000.0分点)
2000年12月 1.47日16.2等(*1)
2001年12月11.46日15.5等(*1)
2002年 1月 2.40日16.6等(*1)
2007年 9月12.81日15.4等(*2)
10月 6.75日15.3等(*3)
11月11.63日14.1等(*2)
12月 3.52日14.9等(*2)
  • (*1) 大倉信雄氏 500mm望遠レンズ + SBIG ST-8
  • (*2) 中島洋一郎氏 口径7.6cm F6.6 屈折望遠鏡 + SBIG ST-8
  • (*3) 大倉信雄氏・中島洋一郎氏 口径7.6cm F6.6 屈折望遠鏡 + SBIG ST-8

近年、アマチュアでも大量の天体画像を撮影できるようになってきているが、撮影された画像のほとんどは新天体の有無を検査されていない。画像の中には重要な現象が発見されずに眠っている可能性があり、MISAOプロジェクトはそこに着目して活動している。今回の発見は画像情報を活用することの重要性をも物語っている。

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