土星の衛星レアにリング存在か

【2008年3月11日 Cassini-Huygens Mission News

カッシーニ探査機の観測データから、土星の衛星レアにリングがあるらしいことがわかった。リングといえば、かつては土星だけにあるものと思われていたが、現在では木星以遠の全惑星にリングが存在することが知られている。そしてついに、惑星だけでなく衛星にもリングらしきものがあるというのだ。


(土星の衛星レアと、それを取り巻く固体粒子の想像図)

土星の衛星レアと、それを取り巻く固体粒子の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/JHUAPL)

土星の衛星の中ではタイタンに次いで2番目に大きい衛星レアのまわりに、固体粒子でできた幅広い円盤と、少なくともひとつのリング(環)があるらしいことが、NASAのカッシーニ探査機が得たデータを解析したGeraint Jones氏らの研究によって示された。太陽系天体のリングは現在のところ惑星にしか知られておらず、衛星にリングの存在が示唆されたのは初めてだ。論文は3月7日付のアメリカの科学誌「Science」に掲載された。

レアを取り巻く円盤の差し渡しは少なくとも数千キロメートル。円盤を構成する粒子のサイズは数ミリメートルから数十センチメートル程度。さらにその外側の、衛星中心から5000kmあたり(レアの半径の8倍)まで、細かい粒子が分布しているかもしれないという。

円盤やリングは、カッシーニ探査機が2005年11月にレアに接近し、衛星の周囲の環境を観測した6つの観測機器によるデータから発見された。固体粒子を直接的に検知した観測機器もあり、それはレアの表面にも恒常的に固体粒子が衝突していることを意味するものだ。電子の観測では、衛星を取り巻く電子が驚くほど少ないことが示された。レアは土星の磁気圏内に位置しているが、レアの周囲では電子やその他の粒子が吸収され、磁性をもつ泡のような場所になっている。これは固体粒子がレアを取り巻いている影響であるとされている。またレアの両側で短い電子の消失部分がとらえられており、これは細いリングの証拠であるとみられる。

この発見を受けて、カッシーニ探査の研究者らは、レアのリングが安定して存在し続けるものなのかどうか、数値シミュレーションを行った。示されたモデルによると、土星の影響下にあるレアの重力圏において、リングが長期間にわたって存在できるということがわかった。

レアのリングは、どのように形成されたのだろうか。ひとつの説は、過去に小惑星か彗星がレアに激突し、飛び散った破片がリングを形成したというものだ。土星の衛星ミマスには、過去の大衝突の痕跡である巨大なクレーターがある。レアにもそうした過去があり、大量の物質が砕け散ったのかもしれない。