火星の衛星フォボスの最新画像

【2008年4月16日 JPL

NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)が、火星の衛星フォボスを約5800kmと6800kmの距離から撮影した。この画像の分析から、衛星の起源や進化の解明につながる情報が得られるかもしれないと期待されている。


(約5800kmの距離からとらえられたフォボスの画像) (約6800kmの距離からとらえられたフォボスの画像)

約5800kmと6800kmの距離からとらえられたフォボス。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

今年の3月23日に火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)が、観測機器HiRISEで火星の衛星フォボスをとらえ、その画像が公開された。

画像は2枚あり、1枚は衛星から約5800kmの距離から、もう1枚は6800kmの距離から撮影されたものだ。それぞれ約15m、20mほどのサイズの特徴を見分けることができる解像度である。

フォボスのもっとも大きな特徴であるスティックニー(Stickney)と呼ばれるクレーターは、直径が約9kmほどあり、クレーターをつくった隕石の衝突の大きさを物語っている。画像中、このクレーターの周辺物質が他の領域にくらべて、より青っぽく見えている。

NASAのジェット推進研究所でHiRISEチームに所属するNathan Bridges氏は、画像に確認された青い色について、「青っぽい色は物質の新鮮さを示すものか、または、宇宙にさらされている時間が衛星のどの領域よりも短いことを示しているのではないかと考えています」と話している。

そのほか画像には、クレーター内部の地すべりの跡や、衛星の表面に見られる溝や鎖状につながったクレーターなどを見ることができる。

また、2つの火星の衛星(もう1つはダイモス)は、火星の潮汐力のため、火星に対しいつも同じ面を向けている。この画像では、火星に反射した太陽光によって、通常暗くて見ることができないフォボスのクレーターの一部が照らし出されている。いわば、地球照(細い月のときに、地球に反射した太陽光によって月の暗い部分が見える現象)の火星版である。

HiRISEの主任研究員である、アリゾナ大学のAlfred McEwen氏は、「フォボスはたいへん興味深い天体です。なぜなら、水の氷と炭素を多く含む物質に恵まれているかもしれないからです」と話している。