5月、夕方の空でボアッティーニ彗星が見ごろ
【2008年4月22日 アストロアーツ】
昨年11月に発見されたボアッティーニ彗星(C/2007 W1)が、予想を上回る増光を見せていて話題になりそうだ。最初の見ごろは5月。双眼鏡が必要となるが、ゴールデンウィーク中は月明かりもなく、まずまずの高度なので観察してみてはいかがだろう。
ボアッティーニ彗星(C/2007 W1)は、2007年11月20日(世界時)に米・アリゾナ州のレモン山(Mt. Lemmon)天文台で撮影された画像からイタリアの研究者A. Boattini氏が発見した彗星である。6月12日に地球最接近を迎えるが、その距離は0.21天文単位(1天文単位は地球からまで太陽の距離)と近い。また、直後の24日には近日点(太陽にもっとも接近する点)を通過する(距離0.85天文単位)ことから、明るくなりそうな彗星として注目を集めていた。
当初の最大予想光度は5等級だったが、3月から4月にかけて予想を上回るペースで増光を見せていることから、3等台に達する可能性もでてきた。一方、軌道に着目すると、太陽系の最外縁部である「オールトの雲」から初めて太陽に接近する彗星であると指摘する専門家もいる。そうだとすれば新鮮な氷が残っていて、尾の発達が期待できるが、同種の彗星は太陽に接近するにつれて増光が鈍るという悲観的な見方もあり、注目されている。
残念なことに、最大光度が予想される6月には、北半球からボアッティーニ彗星を見るのが難しい。東京の場合、5月は夕方に南西の空で見えているものの、日を追うごとに高度を下げ、6月には夜空からすっかり姿を消してしまう。再び現れるのは7月のことで、明け方の空に移っている。ただ、ピークから外れていたとしてもじゅうぶん明るいので、ぜひ観察したい。
ボアッティーニ彗星の位置が高く、観察に時間をあてやすいゴールデンウィークの間はチャンスだ。予想光度は7〜8等台とまだまだ暗いが、月明かりがまったくないという好条件だ。薄明終了時の位置は、5月1日の場合、ほぼ真南の空で30度の高さ。集光が強く尾もはっきりしていると予想されているので、双眼鏡でじっくり探そう。
明るさの移り変わりも気になるところだ。天体撮影に適したカメラをお持ちなら、ぜひ撮影にも挑戦してみよう。
ボアッティーニ彗星(C/2007 W1)の軌道要素
MPEC 2008-E10による(※角度に関する要素は2000.0年分点)
近日点通過(T) | 2008年6月24.88234日 |
---|---|
近日点距離(q) | 0.8495906 AU |
離心率(e) | 1.0001730 |
近日点引数(ω) | 306.55717゚ |
昇交点黄経(Ω) | 334.52352゚ |
軌道傾斜角(i) | 9.88923゚ |
元期(Epoch) | 2008年6月23.0日 TT |
位置推算表(ステラナビゲータ Ver.8で出力)
《ステラナビゲータで彗星の見え方をシミュレーション》
ボアッティーニ彗星(C/2007 W1)の位置を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して確認できます。ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。
また、ボアッティーニ彗星の位置を手軽に星図に表示するスクリプトを「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードし、実行してください。