【レポート】日本公開天文台協会 第3回全国大会
【2008年6月27日 アストロアーツ】
6月24〜26日、日本公開天文台協会(JAPOS)の全国大会が熊本県の南阿蘇ルナ天文台で開催された。全国から約80名の参加者が集まり、公開天文台のあり方や運営に関する意見交換、来年の世界天文年に向けた企画の相談などが活発に行われた。
第3回をむかえた日本天文台協会(JAPOS)の全国大会が、熊本県の南阿蘇ルナ天文台で6月24〜26日の3日間開催された。北は北海道名寄市立木原天文台の佐野康男さんから、南は鹿児島県にある中之島天文台の福澄孝博さんまで、80名近い参加者が一堂に会してセッションやパネルディスカッション、自由発表を行った。
《基調講演》
24日の基調講演では、九州大学の山岡均さんが「公開天文台と新天体」というタイトルでお話しされた。日本における新星や超新星の発見を国際天文学連合に対して迅速に報告される山岡さんだけに、発見事情や国際天文学連合のウェブサイトの使い方など詳しい話を聞くことができた。
新天体発見の分野において公開天文台は、発見や確認観測のみならず、天体のタイプを明らかにする分光観測の面でも、多大な貢献ができる。新天体発見に関する公開天文台の役割は、学術研究面、また天文普及や社会貢献面においてもひじょうに大きいといえるだろう。
《セッション、自由発表》
大会では3つの企画セッションと1つのナイトセッション、13の自由発表が行われた。
■ セッション1:「地域に愛される天文台を目指す」
このセッションでは、「地域に愛される天文台」を目指すために各天文台が取り組んでいる事例の紹介や意見の交換があった。施設の規模や立地条件などさまざまな要因により、目的に対して取り組むべき内容や方法は異なるが、天文台の間で情報やノウハウを交換、共有できる有意義な機会となったのではないだろうか。
■ セッション2:「世界天文年レビュー」
来年2009年の世界天文年に向け、JAPOSとしての取り組みや企画の提案、これまでの事例報告などが行われた。全国一斉観望会の実施や全国SETIキャンペーンなどが検討されている。世界天文年のサイトで、企画の案内や募集、イベントカレンダーなどを確認することができる。
■ セッション3:「中小天文台の運営課題」
公開天文台は全国に約400施設あるが、半数以上は中小施設で、人員や設備、予算などの運営面でさまざまな問題に直面している。本セッションでは、天文台の「設置者」「運営、管理者」および「公開スタッフ」それぞれの立場で発表や討論が行われた。共通認識と理解を持つことや、評価基準を適切に定めてそれに沿った運営・業務を行うことなどの重要性があらためて強調された。
■ ナイトセッション、自由発表
ナイトセッションでは、天文台と企業、メーカーとの間で、JAPOSへの活動支援や製品開発などに関して意見交換が行われた。
また、研究発表や新たな試みなどについて13の自由発表があった。
《総会、声明文》
最終日には総会があり、この中で2つの声明文が提出された。
ひとつは「指定管理者制度」に関するもので、JAPOSと日本プラネタリウム協議会など4団体の共同声明案にJAPOSとして賛同することが議決された。管理運営の効率化のみを追求するのではなく、天文教育施設の役割と機能が維持され公共の福祉に活用されることを願って、長期的な視点の確保や専門職員の配置などを要望するものである。
もうひとつは「サマータイム制導入」に関するものだ。暗くなるのがさらに遅くなることで星空を見る機会が減ってしまうことや、七夕や中秋の名月など伝統的行事が正しく理解されなくなることなどを危惧し、サマータイム制度導入に反対するという立場を表明している。
今後、JAPOSの認知度を高めさらに活発な団体としていくためには、加盟していない天文台に呼びかけたり若い人たちに参加してもらったりする努力も必要だろう。関連他団体やメーカーとの情報交換、協力がさらに発展していくことにも期待したい。
なお、来年は鳥取県のさじアストロパークで開催予定である。