「GLAST」改め「フェルミ」、ファーストライト
ガンマ線で見た全天画像を公開
【2008年8月27日 NASA】
今年6月に打ち上げられたNASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」が2か月間の観測機器の試験を終了し、そのファーストライト画像が公開された。NASAは画像公開と同時に、同衛星の名前を「GLAST」から、「フェルミ・ガンマ線天文衛星(Fermi Gamma-ray Space Telescope)」に改名したと発表した。
NASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」は、ブラックホールやガンマ線バーストなど宇宙でもっとも高いエネルギーを伴う現象の観測を目的に、今年6月に打ち上げられた。
その後GLASTは、約2か月間にわたる搭載機器の試験を経て、観測を開始した。NASAはGLASTのファーストライト画像を公開するとともに、衛星の名前を変更することを発表した。
新しい名前は、エンリコ・フェルミ(1901年〜1954年)にちなんだ「フェルミ・ガンマ線天文衛星」。フェルミは、宇宙線がどのように加速されるのかを初めて示したイタリア人物理学者である。
NASAの科学ミッション委員会の主任研究員Paul Hertz氏は、「彼の名前がつけられた衛星は、多くの新しい現象を発見することでしょう。それら新しい現象を理解するための基礎を与えてくれたのがフェルミの理論なのです」と話している。
フェルミ・ガンマ線天文衛星には、広域望遠鏡(LAT)とバーストモニター(GBM)が搭載されている。GBMは、すでに31のガンマ線バーストを検出している。公開された画像は、95時間かけて行われたLATのファーストライトで得られたものだ。天の川銀河の銀河面に存在するガスやちり、かに星雲(M1)など3つのパルサー、さらに数十億光年離れた銀河が、ガンマ線の波長で明るく輝いている。
画像に見られるほ座パルサーやかに星雲の中心にあるパルサーの正体は、大質量星が超新星爆発を起こした後に残された磁場の強い中性子星である。2つの天体はともに電波を放射していたことから発見された。しかし、ふたご座のパルサー「ゲミンガ」は一風変わっている。実は、そのエネルギーのほとんどを電波ではなくガンマ線で放射しているのだ。フェルミ・ガンマ線天文衛星によって同様の天体が発見されれば、その放射メカニズムが明らかにされるかもしれない。
また、3C454.3は、ブラックホールをエネルギー源とする銀河中心核のなかでも、とくに強力な「ブレーザー」と呼ばれる種類の天体である。この天体では現在、突発的な爆発現象が進んでいて、画像中ひときわ明るく輝いている。
フェルミ・ガンマ線天文衛星の観測によって活動銀河の中心に潜む超巨大ブラックホール周辺で起きる現象に迫れば、新たな物理法則発見への手がかりにつながる成果が得られるかもしれない。