国際宇宙ステーションから撮影された夜光雲
【2008年8月29日 Science@NASA】
7月22日、青白い光を放つ夜光雲が国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された。夜光雲は19世紀末から目撃されるようになった現象だが、衛星による観測が始まったばかりで、いまだなぞが多い。
7月22日、モンゴルの西約340kmの上空に位置していた国際宇宙ステーション(ISS)から、青白く光る美しい夜光雲が写真におさめられた。
大気の研究者として今までに数千枚もの夜光雲の写真を見てきた米・コロラド大学のGary Thomas氏は、この写真について、ベストショットに入る1枚だと話している。この青白い帯の高度は地表から約83kmと計算されている。通常の雲は高度10kmあたりで発生する。一方、夜光雲は高度80kmほどの中間圏で発生する。
夜光雲については起源をはじめとして、なぞが多い。Thomas氏は「最初に目撃されたのは、産業大革命の頃と一致します。しかし、直接的な関係については、議論の余地がありますね」と話す。
人々が夜光雲の存在に気づいたのは、19世紀末。1885年イギリスのRoberto Leslie氏が、細い網の目模様をつくって夜空に浮かぶ雲を観測し、その結果が科学雑誌「Nature」に掲載された。現在では、これが夜光雲の最初の発見とされている。
発見当初の19世紀、夜光雲の正体は火山灰ではないかと考えられていた。しかし、夜光雲は持続して存在するだけでなく、広がりもする。当時、夜光雲を見られるのは、緯度が50度以上の地域(スカンジナビアやシベリア、スコットランドなど)に限定されていた。しかし近年では、中緯度の米・オレゴン州やワシントン州、トルコやイランなどの国々でも見られるようになっている。
今年、イランに突然夜光雲が現れたのは7月19日。写真が撮影された場所の緯度は38度と、かなり南である。また、その日付はISSの宇宙飛行士が夜光雲を写真におさめたほんの数日前にあたる。
NASAは、2007年4月に打ち上げた中間圏観測衛星AIMによって、夜光雲の大きさや形、雲を形成している氷の結晶などを観測している。観測結果から、夜光雲は極地方が夏を迎える時期に現れること、広範囲に広がって、数日から数時間の単位で大きな変化を見せることなどがわかってきた。また、夜光雲を形成している氷の結晶の粒は40〜100nm(ナノメートル、10億分の1m)で、ちょうど青い光を散乱する大きさであることもわかった。同時に、30nm以下の大きさで光を散乱しない、目に見えない結晶の存在も明らかとなっている。
しかし、なぜ19世紀になって現れるようになったのか?なぜ広がっているのか?サハラ砂漠の空気の1億倍も乾燥した希薄な上層大気のなかで、氷の結晶が一体何をしているのか?これら疑問の答えは、今後のAIMによる観測と研究の進展を待つしかないようだ。