2009年のお正月は1秒長い

【2008年9月17日 総務省

2009年のお正月は1秒長い。時刻を地球の自転に合わせて調整する「閏(うるう)秒」が実施されるからだ。閏秒は廃止すべきだ、という意見もあるが、地球の自転と時刻を切り離してしまうことは大きな問題をはらむ。時刻はどのように決められるべきなのだろうか。


国連の下部機関である国際地球回転観測事業(IERS)は、世界時の2008年12月31日の最終秒に「閏(うるう)秒」を挿入することを決定した。これを受け、+9時間の時差がある日本では、総務省と独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が、2009年元日に閏秒を挿入すると発表した。

日本標準時の2009年1月1日午前8時59分59秒の次に59分60秒が挿入され、その1秒後が午前9時になる。閏秒の実施は2006年1月1日以来3年ぶり。閏秒調整が始まった1972年以降で計23秒が追加されてきており、これで24回目の実施となる。

閏秒とは何だろうか。そもそも時間間隔の単位「秒」は、1967年パリにおける国際度量衡総会にて「セシウム133原子の基底状態における2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の、9,192,631,770周期の継続時間とする」と決められている。つまり原子の振動という量子力学的な性質を基礎としている。だからこそ、原子時計は高い精度で時を刻む。

一方、人類は長い間、時刻というものを太陽の位置をもとに考えてきた歴史がある。人類は地球という回転体の上に住んでおり、昼夜の周期つまり地球の自転周期は日常生活の基本だ。ところが原子時計で計測すると、かつて一定と考えられていた地球の自転は、厳密には一定ではないことが明らかとなった。地球の自転周期はしだいに長くなっており、しかもそのペースは一定ではない。地球回転は、月の潮汐力や、地球の外部コアの挙動、表面の水の移動などの複雑な影響を受けて刻々と変化しており、将来的な予測は難しい。IERSは、世界各国の天文台での天体の位置観測の結果をもとに、地球回転に忠実な世界時(UT1)を算出し、原子時計の示す原子時との差などを公表している。

世界各国の標準時の基準となっているのは協定世界時(UTC)であるが、これは原子時に基づきながらも、世界時(UT1)との時刻差が±0.9秒以内に保たれるように適宜1秒ステップの閏秒調整を実施する時刻系だ。いわば原子の振動と、地球回転の双方を基準とした折衷方式といえるもので、両者の時刻差が一定範囲内になるよう人為的に操作している。閏秒調整は世界同時に実施されるが、いつ実施するかは、IERSの中央局が決定して発表している。

電気通信関連の専門家の間では、時刻は原子の振動数を基礎とすべきで、閏秒は廃止すべきだ、という意見がある。閏秒調整は高度な情報通信機器やそれによって運用している社会のシステムにやっかいな問題を引き起こしている。

一方、時刻はあくまで地球の自転に極力合わせておくべきであり、閏秒の廃止は大問題だとする天文学者らの主張もある。閏秒が廃止されると、地球の向きと時刻が対応しなくなる。遠い将来には、正午になってもまだ太陽が昇ってこないといったおかしな事態になりかねない。

時刻系を現代のニーズに合わせることは必要かもしれないが、時刻がもつそもそもの意味を失うようなことがあってはならない。時刻系はどのように決めるべきか、社会全体で考えるべき時がきているようだ。

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