火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」の打ち上げ延期
【2008年12月19日 JPL】
NASAは、2009年10月に予定していた火星探査車マーズ・サイエンス・ラボラトリー(Mars Science Laboratory;MSL)の打ち上げを2年延期し、2011年の秋に変更した。
NASAは、火星探査車マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)計画について、試験を行いハードウェアの問題を解決してミッションの成功を確実にするためには、2009年10月の打ち上げはもはや実現不可能と判断、打ち上げの延期を決定した。
地球と火星が打ち上げに適した位置関係となるのは、2年間でたった数週間しかないため、次回打ち上げのチャンスは2011年の秋となる。
NASAのジェット推進研究所のCharles Elachi氏は、「開発チームはシフトを組んで、徹底的に作業を進めてきました。しかし、当初の打ち上げ予定までに技術的な問題を解決することができませんでした。ミッションの成功のためにも、2011年の打ち上げは正しく、かつ賢い道なのです」と話している。
MSL完成への道のりを険しくしている原因は、これまでにないまったく新しい技術を採用したことだ。その中で、もっとも特徴的なのは着陸方法である。
火星の大気に突入後、パラシュートから切り離されるMSLは、自ら噴射しながら下降するのである。MSLの上部にスカイクレーンと呼ばれる噴射装置が付いていて、スカイクレーンとMSLはワイヤでつながれている。
ある程度下降したところで、スカイクレーンからのワイヤが伸びて、MSLは地表に近づく。MSLの車輪が地表へ降り立つと同時に、ワイヤが切り離されて着陸が完了する(一方のスカイクレーンはそこから離れた場所へ飛び去る)。なお、MSLのウェブサイトでは、着陸のようすを描いた動画を見ることができる。
そのほか、MSLに搭載される機器の重さは、NASAの火星探査車スピリットやオポチュニティーに搭載されている重量の10倍ほどもある。開発チームは、この重いMSLをでこぼこした地表と長距離の走行にも対応させる計画で、その性能の実現にもこれまでなかった新しい推進装置が必要とされている。