野辺山45m望遠鏡、110億光年かなたの銀河から電波を受信
【2009年4月17日 国立天文台 アストロ・トピックス(464)】
今年から、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m望遠鏡に新しい受信機が搭載された。同望遠鏡は新受信機を使った観測で、110億光年の距離にある銀河から届いた星形成の重要な指標となる一酸化炭素分子が放つ電波を、わずか10分で検出することに成功した。
アストロ・トピックスより
遠い宇宙からやってくる電波信号は大変微弱です。その微弱な電波を受信するために、電波天文学者は観測装置の開発や改善を行い、日夜地道な努力を続けています。
国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m望遠鏡には、同観測所の酒井剛(さかいたけし)元研究員(現東京大学天文学教育研究センター特任准教授)、中島拓(なかじまたく)研究員らと大阪府立大学の共同で開発された受信機システムが新たに搭載され、今年から共同利用観測などに用いられています。この受信機は従来のものに比べてたいへん性能が高いため、これまで45m望遠鏡ではひじょうに難しかった遠方宇宙の観測などが活発に行われるようになると期待されます。
この新受信機を用いて、同観測所の伊王野大介(いおのだいすけ)准教授らは110億年前の宇宙に存在する「Cloverleaf(クローバーリーフ)」(和訳では四ツ葉のクローバー、注1)とよばれる銀河を観測し、この銀河に存在する一酸化炭素分子の放つ電波(97GHz(ギガヘルツ)、注2)の検出に成功しました。
このような遠方銀河の観測の場合には、何時間、場合によっては何日もの観測時間を投じて一酸化炭素分子探査を行い、運が良ければかろうじて検出に至るのが通例でした。しかし、この高性能受信機を使うことによって、今回はわずか10分で一酸化炭素分子の放つ電波スペクトルが検出され、45m望遠鏡の飛躍的な観測性能の向上が顕わになりました。
この新受信機を使った観測は、現在毎日のように行われており、今後の成果が大いに期待されます。また、45m望遠鏡では、さらに新しい観測装置の搭載が予定されており、遠方宇宙に存在するCloverleafのような銀河の一酸化炭素分子を探査することによって、銀河の形成や巨大ブラックホールの誕生の謎に迫っていきます。
注1:Cloverleaf は、重力レンズと呼ばれる機構によって明るさが増幅されている。また重力レンズの効果により、1つの銀河が見かけ上4つに分裂し、四ツ葉のクローバーのような形を作り出している。
注2:一酸化炭素分子は、星の主な材料である水素分子の分布や存在量とよい相関を示すため、起こりうる星形成の重要な指標になる。