部分日食を安全に観察しよう−目を痛めないために−
【2009年7月1日 国立天文台 アストロ・トピックス(482)】
7月22日の日食まで、20日あまり。国立天文台では、全国で見られる部分日食について、誤った観察方法による事故を防ぐために、必ず正しい方法で観察するよう呼びかけている。
アストロ・トピックスより
来る7月22日の日食まで、あと1か月を切りました。今から楽しみにしている人も多いことでしょう。日本では、奄美大島北部、トカラ列島、屋久島、種子島南部などでは皆既日食を、それ以外の場所でも、全国で部分日食を観察することができます。
その日は、晴れれば多くの人が部分日食を観察すると思われます。これまでの日食では、誤った観察方法によって網膜が焼け、視野の一部が欠けてしまうなどの事故が報告されています。観察方法を誤ると、最悪の場合失明してしまう危険性もあります。皆さんはそのようなことにならないよう、正しい方法で日食を観察してください。未成年者に事故が多いとの報告もありますので、保護者の皆さんは、よく注意をしてあげてください。
まず絶対にしてはいけないのが、肉眼で太陽を見ることです。肉眼で太陽を見ると、たとえ短時間であっても、目に大きなダメージを受けます。
太陽は大変強い熱や光を放射しています。部分日食では、太陽の一部が月に隠されていますが、たとえ食分(太陽の見かけの直径が欠ける割合)が90パーセントや95パーセントとなり、太陽がとても細くなったときでも、危険であることに変わりはありません。太陽からの熱や光はそれほど強烈なのです。また、適切に減光していない望遠鏡や双眼鏡を使うことは、太陽の光や熱を強めるためさらに危険です。
部分食を安全に観察する方法として、間接的に太陽の形を見る方法があります。
例えば、厚紙など、光を通さないシートに小さな穴を開けて、日食中の太陽の光を通します。すると、穴を通って影の中に映った太陽の光は、欠けた太陽の形になります。面白いことに、木もれ日も、同じ原理で、葉の間を通ったそれぞれの光が欠けた太陽の形になります。
また、小さな鏡で反射させた光を遠くの壁に映すと、その光は欠けた太陽の形になります。反射させた光が人の目に当たらないよう注意してください。
減光によって太陽を見るには十分な注意が必要です。安全に太陽を見るには、太陽専用の日食グラスや遮光板を使ってください。ただし、その場合でも、長時間連続して観察を続けることは避け、使用上の注意を必ず守ってください。
サングラスやゴーグルは、太陽の光を十分に減光できる濃さがありませんので、大変危険です。絶対に使わないでください。
また、ススをつけたガラス板や下敷き・CDも使ってはいけません。たとえ目ではまぶしさを感じなくても、赤外線(熱線)は強いまま目に達して、網膜を焼いてしまうことがあります。以前は、部分日食を観察する方法の一つとして紹介されることがありましたが、現在では危険な方法だと考えられています。
現像した白黒フィルムは、安全に見るための条件が大変難しいため、専門家の指導に従って使用してください。
全国での日食の見え方など日食に関する情報や、日食の観察方法についてさらに詳しくお知りになりたい場合は、以下のページをご覧ください。
なお、当日、国立天文台三鷹では日食観察イベントは行いませんので、ご注意ください。