星形成に大きな役割を果たす大質量星
【2009年8月17日 NASA JPL】
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーとX線天文衛星チャンドラが星形成領域「ケフェウス座B」を観測し、大質量星が引き起こす星形成の数がこれまで考えられていた以上に多い可能性が示された。
星や惑星の形成は、冷えたガス雲が自らの重力で収縮するか、または、超新星爆発の衝撃波や大質量星からの放射など外からの影響で星間物質が集められて密度が高くなることで始まると考えられている。しかし、現在までのところ、どれが最大の要因であるかはよくわかっていない。
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーとX線天文衛星チャンドラは星形成領域「ケフェウス座B」を観測し、星形成の要因に迫った。ケフェウス座Bは地球から2400光年離れた分子雲で、内部とその周辺にはあわせて数百個もの若い星が存在している。
両天文衛星による観測で、ケフェウス座Bの星形成が、主に分子雲の外側に存在する明るい大質量の星(HD 217086)によって引き起こされている可能性が示された。あるモデル計算によって、この星からの放射で物質が圧縮され、それが星形成の引き金となること、さらに分子雲の外側の層が蒸発してしまうことが示されたという。また、原始惑星系円盤の有無を調べることで、分子雲の外側に存在しているの星の年齢が数百万歳、内側に存在しているの星の年齢が百万歳以下であることが明らかとなった。
米・ペンシルベニア州立大学のKonstantin Getman氏は、「研究者の間ではこれまで、大質量星の放射によって星や惑星の形成が引き起こされるのはめずらしいと考えられていました。わたしたちが得た成果は、それが間違っている可能性を示唆しています」と話している。
これまで星の放射で星形成が引き起こされた例は、数十個単位の小さな星の集団でしか観測されていなかった。しかし、スピッツァーとチャンドラの両天文衛星は、そのような星形成が数百個もの星の集団で起きていることを初めて示したのである。
ペンシルベニア州立大学のEric Feigelson氏はこのことについて、「星や惑星の形成が分子雲で広がっていく現場を見ているのです。両天文衛星のおかげで、今後も星形成の現場について多くのことを学べることはまちがいありません」と話している。