10月9日、エルクロスが月面衝突実験
【2009年10月5日 NASA】
6月19日(日本時間)に打ち上げられたNASAの衛星エルクロス(LCROSS)の月面衝突実験が、いよいよ10月9日に迫った。NASAは、今月に入って衝突地点となるクレーター名を発表していたが、その後の月面データの分析結果から、目標を別のクレーターに変更した。
NASAでは、エルクロスの科学チームや衝突実験の専門家らが、さまざまな月面データを利用して、エルクロスの衝突地点となるクレーターの選定作業を進めてきた。
衝突地点は、当初クレーター内部が平坦で岩石の少ない「カベウスA・クレーター」と発表されていた。しかし、その後も進められてきた分析の最新結果を受けて、「カベウス」に変更された。カベウスAやカベウスが存在する月の南極には、かなりの確率で水素が豊富に存在していると考えられており、いずれも南極にある衝突候補地点の中から選ばれた。
選定には、NASAの月探査機ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)やルナ・プロスペクター、インド宇宙研究機関(ISRO)の無人月探査衛星「チャンドラヤーン1号(Chandrayaan-1)」、および宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査衛星「かぐや」が得た多くのデータが使われた。
とくに、「かぐや」や「LRO」が得た地形データから、カベウスの中心には小さな谷があり、クレーターの縁が高い壁となっていることが示された。暗く高い壁を背景にすることで太陽光で明るく見える噴出物の観測が可能になると考えられている。通常、月面からの噴出物は、かなりの高度に到達しなければ、地球から観測することはできない。
なお、実験の実施は日本時間の10月9日20時30分頃と予定されており、エルクロスのチームでは、残りわずかな数日間に、地球からより効果的な観測が行えるよう、クレーター内部にでこぼこの少ない場所を探し出し、正確な衝突地点を決定する。