長周期変光星ぎょしゃ座イプシロン、減光開始

【2009年10月7日 アストロアーツ】

27年周期の変光星ぎょしゃ座ε(イプシロン)の食が始まった。主星の前を、巨大な円盤を持つ伴星が通過することが減光の原因とされているが、変光のタイミングがずれるなどミステリアスで興味の尽きない星だ。


文:プラネタリウム解説員 金井三男さん

(ぎょしゃ座ε付近の星図)

ぎょしゃ座ε付近の星図。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)。拡大星図中の数値は恒星の等級を表す(40は4.0等級など)

(1982〜1984年のぎょしゃ座εの光度曲線)

ぎょしゃ座εの光度曲線。クリックで拡大

注目されていた長周期食変光星ぎょしゃ座ε(イプシロン)の減光が、予報どおり8月に始まりました。私が昨年9月から始めた実視観測によれば、第一接触(部分食開始)が8月10日ごろとみられます。7月から8月にかけて天候に恵まれず、観測数がまばらでデータの確度が低いものですが、それでもこの時期に減光を開始したことは確実です。

9月以降の減光は予想以上の急降下なので、12月19日と予報されていた皆既食開始は、もしかすると12月初めになるのではないかと考えております。

過去の観測では、部分食を含めた食期間は1901年に727日、1983年に640日と減少している一方、皆既食期間は逆に1901年に313日、1983年に445日と増加していますが、今回はどうなるでしょうか。一説には、(主星を隠すことで減光を引き起こす)伴星を囲む円盤が縮小しているためと言われています。

一応の予報では、以下のようになっています。

2009年8月11日 第一接触(部分食開始)
2009年12月19日 第二接触(皆既食開始)
2010年8月4日 皆既食中央
2011年3月19日 第三接触(皆既食終了)
2011年5月13日 第四接触(部分食終了)

少なくとも食外の期間には、最大0.1等の小変光が見られるため、今年7月〜9月はじめまでの観測でも、第一接触の時期が正確に決定できませんが、8月10日頃というのは、とりあえず良い線と思えます。

なおこの小変光(ケフェイド型と言われる)にも、たいへん興味が持たれます。理由は不明ですが、1984〜87年の観測では96日、90年 89日、2003〜04年 71日、07〜08年 65日、08〜09年 64.4±0.2日(金井の観測から)と減少してきているからで、このまま外挿すると2058年には、0日になってしまいます。したがって、この小変光も今後どのような変化を辿るか、食外食内とわず継続観測が必要です。

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