ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたアヤメ星雲
【2009年12月8日 ESA HST】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、地球から約1400光年の距離にあるケフェウス座のNGC 7023(アヤメ星雲)をとらえた。星雲の一部が赤っぽい色をしている理由はまだはっきりとわかっていないが、HSTの高解像度画像の分析と地上の実験でその答えが得られるかもしれない。
アヤメ星雲(Iris nebula)は、差し渡し約6光年の範囲に広がっている。HSTの掃天観測用高性能カメラ(ACS)が、その一部の領域をとらえた。盛り上がる綿のように見えているのはちりで、そこに光を当てているのは、近くに位置する恒星HD 200775である。HD 200775の質量は、太陽の約10倍である。
宇宙のちりは、われわれの身近にあるほこりと比べると、大きさは10分の1から100分の1ほどである。ちりを詳しく調べることは、星を誕生させる材料を突き止めることにつながる。
アヤメ星雲は反射星雲であり、HD 200775の光を散乱している。反射星雲は傾向として青っぽい色をしているのだが、アヤメ星雲には赤っぽい部分がある。中でも研究者は、画像の左側、真ん中よりやや上の領域に注目している。この領域にある繊維状の構造が予想以上に赤い色をしているからである。
原因は、星雲に存在する炭化水素系化合物とみられている。HSTがとらえた高い解像度と感度を持つ画像や、近赤外線カメラ兼多天体分光器であるNICMOSのデータが、星雲の物質を詳しく調べるために役立てられる。同時に、地上の研究室では、星雲の化合物を決定するための実験が行われる。