冬の闇から姿を現した、土星の六角形
【2009年12月17日 JPL】
NASAの土星探査機カッシーニが、15年ぶりに太陽光が射した土星の北極を撮影し、なぞの多い六角形の姿を鮮明にとらえた。
NASAの探査機ボイジャーは、今から30年ほど前、当時春が始まったばかりの土星の北極を観測し、六角形を見つけた。
2007年には、土星探査機カッシーニが冬の闇に覆われていた土星の北極を赤外線で観測。 その結果、六角形がほぼ安定して存在していることや、その構造が大気の奥深いところまで続いていることがわかった。
土星の北極で15年間続いた冬は今年1月に終わりを迎え、太陽光が射し始めた。カッシーニはボイジャー以来30年ぶりに、六角形を可視光で撮影した。
カッシーニとボイジャーがとらえた画像を比較したところ、六角形の位置や形が一致していることが確認された。カッシーニの可視光画像は、ボイジャーやカッシーニの赤外線観測装置による画像より解像度が高いので、これまで見られなかった同心円や渦、高速の気流などがとらえられている。
六角形は、北緯約77度の位置にあり、直径は地球の2倍以上と計算されている。また、六角形に沿うようにして秒速約100mのジェット気流が吹いている。
この構造の形成プロセスをはじめ、エネルギーがどこから得られていてどこへ放出されているのか、長期間にわたって存在し続けられる理由は何か、などはよくわかっていない。
その手がかりを得るために、とくに研究者が注目しているのが、今回新たに明らかになった六角形の角から広がる波と、六角形の辺に沿って何重にも形成された、大気最上層まで伸びる壁である。
NASAのジェット推進研究所で大気を研究しているKevin Baines氏は、「土星は地球と異なり、複雑な気象をつくる大陸や海もありません。そのため、今後の研究でより基本的な大気循環モデルが確立されて、六角形のなぞが解ければ、地球の気象に関する基本的ななぞも解明されるかもしれません」と話している。
なお、以下の「参照」リンク先で動画を見られる。