むりかぶし望遠鏡がとらえた、奇妙な彗星
【2010年1月19日 石垣島天文台】
石垣島天文台の「むりかぶし望遠鏡」が、今年1月6日に発見されたリニア彗星(P/2010 A2)を観測し、コマや核がなく尾だけが伸びているという奇妙な姿をとらえた。
奇妙な彗星(仮符号:P/2010 A2)を観測
1月15日夜、石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡(口径105cm)は、コマや核とよばれる頭の部分がない奇妙な彗星の撮影に成功しました。
この天体は、1月6日にNASAのリニア(LINEAR)計画のチームによって新しい小惑星として発見されましたが、その後の観測で長い尾が見つかり、彗星として分類され仮符号(P/2010 A2)が付けられました。
しかし、奇妙なことにこの彗星は、まっすぐとした長い尾をもちながら、コマとよばれる淡く広がった領域も、明るく輝く核とよばれる部分もありません。一般に、彗星は、ほとんどが氷とダスト(塵)でできているとされています。太陽に近づくと熱や太陽風によって表面が蒸発し、周囲にはコマを作り、吹きだした塵やガスは太陽風に流されて尾を作り“ほうき星”になります。
今回のように、明らかなコマや核の部分がなく、尾の部分しかないといった彗星は、たいへんめずらしいものです。現在の尾の長さは、角度で約4分(角度1度は60分。月の見かけの直径は約30分)、実際は地球と月の距離の半分ほどになります。
研究者の間では、小惑星同士の衝突によってできたものではないか、あるいは核の部分がすでに分裂してなくなってしまっている彗星ではないかなど、その成因についてさまざまな議論がなされています。
石垣島天文台では、むりかぶし望遠鏡と3色同時撮像CCDカメラを使って引き続き観測を続け、その成因などを探ってゆく計画です。
この彗星は、現在ふたご座にあり、深夜にほぼ天頂を通過していきますが、約19等星の明るさで肉眼では見ることができません。地球からの距離は約1億5000万kmで、ちょうど太陽と反対側にあり、火星と並ぶようにして太陽のまわりを回っています。
※この情報は、国立天文台・石垣島天文台の宮地竹史さんよりお寄せいただきました。