双子の衛星ガニメデとカリスト、表情が違う理由
【2010年2月4日 SwRI News】
木星の衛星ガニメデとカリストは、大きさも成分も似通っているのに、まったく異なる表情をしている。木星からの距離の違いが、小天体との衝突頻度や衝突の激しさの違いを生み、両衛星の表面だけでなく内部構造にまで違いをもたらしたようだ。
木星の衛星ガニメデとカリストは、大きさが似ていて、岩石と氷からできている点も共通している。しかし、30年前に両衛星に接近したNASAの探査機ボイジャーが撮影した姿には大きな違いがあった。さらに、内部構造も異なることが示されたが、それから30年間、違いを説明する決定的な答えは見つかっていなかった。
米・サウスウエストリサーチ研究所の惑星科学局のAmy C. Barr博士とRobin M. Canup博士は、その違いが小天体との衝突にあるのではないかと考えた。太陽系の惑星や衛星が46億年前に誕生して以来、何度かに分けて小天体が爆撃のように集中的に衝突する時期があった。両氏はそのひとつ、38億年前の後期重爆撃期において、彗星のような氷天体が2つの衛星にどのように衝突したか計算した。
それによれば、木星の強い重力が彗星を引き寄せ、ガニメデとカリストに衝突させた。しかしガニメデの方が木星に近いため、カリストの2倍ほど多く衝突を受けたという。しかも、ガニメデに衝突した天体の方が平均して速いスピードでぶつかった。
「この時期に起きた小天体の衝突によって、ガニメデは中心部まですっかり溶けてしまい、なかなか冷めませんでした。チョコチップアイスクリームを溶かせばチョコレートが底に沈むのと同じように、ガニメデの岩石はすべて中心に集まったのです。一方、カリストへ衝突する小天体は少なく、遅かったので、完全に溶けることはありませんでした」とBarr博士は話す。
この研究成果は、比較惑星学における昔からの問題である「似たような大きさの惑星の表面になぜ違いが見られるのか」という疑問に光を当てることとなった。
Barr博士は「地球と金星が大きさのよく似た双子の惑星であるように、ガニメデとカリストは双子の兄弟です。同時に生まれた双子がどうしてこのような違いを持つようになったのかは、惑星科学者にとって大いに興味のあることです」と述べている。