巨大銀河の星形成を止めたガス流出

【2010年3月17日 RAS

地球から約100億光年の距離にある巨大な銀河に、外へ向かって噴出する巨大なガスの流れが発見された。初期宇宙では、連続する大規模な爆発によって、このようにガスが銀河から流出したために、星形成や銀河の進化が一時止まってしまったと考えられている。


(初期宇宙の銀河で起きていた大規模なガスの噴出の想像図)

初期宇宙の銀河で起きていた大規模なガスの噴出の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/CXC/M.Weiss)

英・ダラム大学物理学部が率いる研究チームは、おおぐま座の方向約100億光年の距離に位置している巨大な銀河「SMM J1237+6203」を観測し、銀河内にある物質の移動速度を計測した。その結果、銀河の外へ噴出する、巨大なガスの流れを発見した。

研究チームによると、この銀河では数百万年にわたって、毎秒原子爆弾1兆個に相当する爆発が次々と起きていたという。本来なら銀河の重力に支配されている大量のガスが、猛烈な爆発によって銀河の外へ放り出されてしまえば、銀河における星形成や銀河の進化も止まってしまう。

このガス放出現象を引き起こしたのは、銀河の中心に潜むブラックホールから噴き出すジェットか、または繰り返し起きた超新星爆発ではないかと考えられている。

天の川銀河周辺にある銀河の組成を見る限りでは、星の誕生と銀河の成長が一時停止していたことが示されている。その原因として、このような爆発があげられていたが、初めてその証拠が得られた。研究チームは、同様の現象がほかの遠方銀河でも起きているかどうか確認するために、今後も観測を続ける。