土星のB環が変形する理由、ボイジャー以来初めて解明か
【2010年11月9日 NASA】
土星のB環の外縁のふるまいはとても複雑で、衛星ミマスの影響だけでは説明がつかず、ボイジャー1号2号による観測以来長年のなぞであった。NASAの土星探査機カッシーニが4年がかりで撮影した画像から、そのなぞの答えが示された。
NASAの探査機ボイジャー1号と2号は、それぞれ1980年と1981年に土星まで約10万から12万kmの距離に接近した。以来、B環の外縁が衛星ミマスの重力の影響によって、回転するつぶれたフットボールのような形になることが知られてきた。しかし、B環の外縁のふるまいは複雑で、ミマスの影響だけではとうてい説明がつかなかった。
土星探査機カッシーニが4年間もの歳月をかけてとらえた数千枚にもおよぶB環の画像の分析から、その主たる原因が明らかになった。B環の外縁が少なくとも3つの波(振動)によって歪められており、その発生源は衛星ではなく、環そのものからの自然発生だというのだ。環の密度が高いことやB環の外縁がひじょうにくっきりしていることが、波が発生する原因の一部であるという。
カッシーニの画像解析チームのリーダーCarolyn Porco氏は「約13年前、カッシーニの旅が始まったころにいつか解明したいと望んでいたなぞを、ついに明らかにしました」と話している。また、カッシーニ画像チームのJoseph Spitale氏は「これは、ギターの弦をかき鳴らしたときに固有の振動が起きるのと同じです。環にも同じように固有の振動数があって、それをわたしたちが観測しているというわけです」と話している。
このような振動は、天の川銀河のような渦巻銀河を取り巻く円盤や原始惑星系円盤でも起きていると考えられている。ただし、これまでに直接確認されたことはない。つまり、土星の環という自然界に存在する環の観測から、このタイプの大規模な振動が起きていることが初めて確認されたというわけである。
また、別の画像(3枚目)には、高さ2.5kmにも達する垂直な構造がB環の外縁に見られるようすが、環に落ちる影と共にとらえられている。