ビッグバンから数マイクロ秒後の宇宙は液体だった?
【2010年12月1日 University of Birmingham】
欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で、ビッグバンから数マイクロ秒後のようすが再現された。その結果、極初期の宇宙はひじょうに高温・高密度だっただけでなく、熱い液体のようなふるまいを見せていたことが示された。
欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で、ビッグバンから数マイクロ秒(=100万分の1秒)後の状態が再現された。
実験は、6つあるグループのうちの1つであるALICE(イオン衝突加速装置実験)によって行われ、鉛の原子核を加速して可能な限り高いエネルギーで衝突させた。
その衝突実験から、高温・高密度の物質の火の玉が生成され、ビッグバンからたった数マイクロ秒後の宇宙と同じ状態が再現された。
再現された、いわば「ミニ・ビッグバン」ともいえる状況下では、摂氏10兆度以上の熱が発生したはずだという。原子核は陽子や中性子でできているが、その陽子や中性子もクォークやグルーオンと呼ばれるさらに小さな粒子によって構成されている。10兆度以上という超高温の環境では、通常の物質は溶けて「クォーク・グルーオン・プラズマ」と呼ばれる、クォークとグルーオンがばらばらになったプラズマ状態となる。従来「クォーク・グルーオン・プラズマ」は、気体のようなふるまいを見せると予測されてきたのだが、この衝突実験では熱い液体のような性質を見せた。
実は、過去に行われたより低いエネルギーの衝突実験でも、火の玉は液体のような性質を見せていた。しかし多くの研究者は、「クォーク・グルーオン・プラズマ」は超高温では気体のようなふるまいを見せると予測していた。
実験の初期成果は、そのほかにも物理学分野の多くの理論の予測を否定することとなった。ALICEの主任研究員 David Evans博士(英・バーミンガム大学)は「まだ初期段階ですが、わたしたちは宇宙について多くのことを学び始めています」と話している。