欧州宇宙機関が10年後のミッション候補を発表
【2011年3月1日 ESA】
欧州宇宙機関(ESA)が2020〜2022年に開始する宇宙探査ミッション4候補が選定された。今後、審査を経て実施ミッションを決定する。
欧州宇宙機関(ESA)が2020〜2022年に打ち上げる中規模ミッションの候補4つを選定した。2010年7月の応募に寄せられた47件のミッション提案を宇宙科学諮問委員会が科学的意義から評価し、それに基づいてしぼったものだ。今後さらに実現性などを審査し実施ミッションを決定する。
4つのミッション候補は以下の通り(和名は暫定訳)。
- 系外惑星特性観測衛星(EChO):
- 系外惑星の大気調査に特化した初のミッション。太陽と反対側にあるL2ポイント(注1)を周回しながら、系外惑星の大気組成・温度・光反射率を観測し、内部構造を調べる。惑星の形成進化や、生命に適した環境についての知見を得る。
- X線タイミング大型望遠鏡(LOFT):
- ブラックホールの「事象の地平線」近くでの物質の運動(注2)について根本的な原理を探る。また、X線放射の様子やスペクトルの変化から中性子星(注3)の物質状態を知る。天の川銀河内の重力崩壊天体や、活動銀河(注4)の大質量ブラックホールの研究を大きく進化させることが期待される。
- マルコポーロ−R(MarcoPolo-R):
- 地球近傍小惑星(注5)の物質を地球に持ち帰り、惑星形成のプロセスや、地球型惑星の材料となる岩石の起源を探る。未だ発見されていない太陽系誕生以前の物質の有無や、有機化合物を分析して生命の材料となる分子の起源を探る。
- 時空探査/量子等価原理宇宙実験機(STE-QUEST):
- 重力が時間や物質に及ぼす影響を詳細に測定するミッション。アインシュタインの一般相対性理論の基本的前提となる「等価原理」をテストする。実験機の時刻と地上の時刻を比較して時空曲率を測定する。また、自由落下の法則(注6)の普遍性を確認する。
また、2017〜2018年打ち上げのミッションとして3つの候補がすでにあげられており、暗黒物質・暗黒エネルギーを調査する「Euclid」、恒星の惑星形成率を調査する「PLATO」、太陽を接近観測する「Solar Orbiter」の審査結果が今年中に発表される予定だ。
注1:「ラグランジュ点」 地球軌道近辺の5つの特定の位置(L1〜L5)に置いた物体は、太陽・地球と位置関係を保ちながら同じ周期で公転することができるため、これらの位置は衛星の観測ポイントとして利用される。
注2:「ブラックホール近辺の物質」 ブラックホール近辺には、重力で引かれた物質が渦を巻いて「降着円盤」を形成している。
注3:「中性子星」 太陽の8〜30倍程度の質量を持つ星が超新星爆発を起こしたあとにできる天体。スプーン1杯で60億トンという超高密度のため、陽子や電子が合体して中性子になりぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
注4:「活動銀河」 中心の巨大ブラックホールが物質を激しく吸い込むことにより、その付近からエネルギーが放出されて明るく光る銀河核を持つ銀河。
注5:「地球近傍天体」 地球の公転軌道から約4,500万km以内まで接近する天体。
注6:「自由落下の法則」 物体の重量や大きさなどによらず、落下する時の加速度は一定とする法則