福江翼さんが「星惑星形成領域の偏光」研究で井上研究奨励賞受賞
【2011年3月4日 すばる望遠鏡】
国立天文台ハワイ観測所の福江翼さんが2010年度井上研究奨励賞を受賞した。「星惑星形成領域における偏光」の研究が評価されたものだ。
今年2月、井上科学振興財団は「2010年度井上研究奨励賞」を全国30名に授与し、国立天文台ハワイ観測所の福江翼(ふくえつばさ)さんがその一人となった。この賞は、過去3年間に自然科学分野で博士の学位を取得し、新しい領域を開拓する可能性のある優れた博士論文を提出した35歳未満の研究者に贈られるもので、福江さんは京都大学に提出した「星惑星形成領域の偏光研究」をテーマにした博士論文が評価されての受賞となった。
福江さんは2009年からハワイ観測所研究員として国立天文台本部に勤務、2010年4月には「宇宙の特殊な光から地球上の生命の起源に新知見」という記者発表(天文ニュース「生命をかたちづくったアミノ酸の謎に迫る」参照)を行うなど若手研究者として活躍中で、2月には著書「生命は、宇宙のどこで生まれたのか」(祥伝社新書)も出版されている。
今回の受賞についての福江さんのコメントは次の通りだ。
「私は、星や惑星、そして生命が宇宙のどのような環境で、どういった物質から誕生し、進化していくのかについて研究しています。若い星や惑星の周囲にはたくさんの塵などが漂っていて、塵が光を散乱する際に、光の振動に『偏光』という特徴的な影響を残します。博士論文においては、とくにこういった偏光という性質に着目して理論と観測の両面から研究をまとめました。生命の起源や宇宙生物学(アストロバイオロジー)の観点でも議論を展開しています。」
「まず観測面では、オリオン大星雲において円偏光と呼ばれる特殊な光が太陽系の大きさの400倍以上にもわたって広がっていることを発見しました。太陽系においても、原始太陽系円盤の時期にこのような円偏光にさらされたため、地球上の生命の素となるアミノ酸の型が偏ったと思われます。また、このような円偏光がどのように生じているのかについても調べました。このたびの受賞は、偏光の理論研究やイメージング観測、宇宙生物学といった新しい分野の研究に対してたいへん大きな励みになり、本当に感謝しております。」
また、「研究を進める上で、今まで多くの方々に支えて頂きました。引き続き努力を重ねて参りますので今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。」と今後の抱負を語っている。福江さんが現在進めている研究などの詳細は、下記〈関連リンク〉の福江さんのウェブサイトから見ることができる。
天文関連ではこの他に、東京大学大学院理学系研究科の西岡辰磨(にしおかたつま)さんが「ゲージ/重力対応に於けるブラックホールエントロピーの理解」というテーマで同賞を受賞している。