新天体発見を支えるダニエル・グリーンさんに聞く
【2011年7月20日 アストロアーツ】
長野県野辺山で7月16、17日に行われた第41回彗星会議に出席するため来日したダニエル・グリーン(Daniel W. E. Green)さんが、月刊「星ナビ」で「新天体発見」を連載中の中野主一さんと共にアストロアーツを訪問してくれた。グリーンさんは、彗星、新星、超新星などの新天体発見情報のとりまとめや発表を行う国際天文学連合(IAU)天文電報中央局の局長を務めている。
− 淡路島での彗星会議に出席した1993年以来2度目の来日だそうですね。日本のここが変わったというところは?
みんな携帯を持っているというところです(笑)前回は長野でスキーにも行きましたが、今の季節ではそうはいきませんね。
日本の新天体発見者で直接お会いして知っている人はあまりいませんが、前回は高知の関勉さん(池谷・関彗星などの天体発見者)の天文台にもうかがいましたよ。
− 今回の彗星会議では「彗星の情報伝達とその解析」というテーマで講演をされるそうですが、どのようなお話なのでしょうか?
電報から電子メールまで、新天体発見の伝達手段は情報網の発達によって変わってきました。そうしたここ100年あまりの歴史についてお話ししたいと思っています。また、私が現在企画している彗星データセンターの構想についても。これは「彗星科学研究所/アーカイブ」といって、これまでの彗星観測データを全て網羅・集約するプロジェクトです。現在このプロジェクトのための資金集めも行っているところです。
− これまでの日本の天文家による発見で印象的だったものは?
百武彗星です。
− 日本の観測者と、欧米の観測者に違いはありますか?
はい。日本の観測者はとても協力的だということです。新天体が発見された際には別の観測者による確認が必要になりますが、他の国に比べてもそういった確認観測に積極的な方々が多いと思います。
− 日本で新天体捜索を行うアマチュア天文家は20人足らずです。アメリカなどではどうでしょうか?
全然少なくないですよ。日本だけで全世界の半分を占めているぐらいです。アメリカでは天体写真は人気ですが、新天体捜索者は両手で数えられるくらいです。それも超新星ばかりで、彗星を捜す人はほとんどいないのが現状です。この状況を変えるのは難しいと思います。すぐに結果が出て楽なアストロメトリ(位置測定)観測に比べ、新天体捜索は地道で忍耐が必要です。だから誰もやりたがらないんです。
私の専門は彗星ですから、もっと多くの人が彗星観測に向かってほしいと思っています。彗星の場合には発見だけではなく追跡観測も大事です。大人数が長期間にわたって観測しないと軌道が決定できませんから。
彗星を発見すれば自分の名前をつけることができます。そういったことが励みになると思います。