銀河のマトリョーシカ? 渦巻の中心にもう1つの渦巻
【2012年5月30日 NASA】
1億光年かなたにある「渦巻型の中心部を持つ渦巻銀河」。この珍しいタイプの天体は、銀河の成長の多様な道のりをわたしたちに伝えてくれている。
ハッブル宇宙望遠鏡が、コンパス座の方向約1億光年かなたの渦巻銀河「ESO 498-G5」の姿をとらえた。多くの渦巻銀河には星が集まったやや扁平な球形のバルジ(中心部の膨らみ)が見られるが、面白いことにこの「ESO 498-G5」では、その渦巻の腕が中心部から始まっているため、バルジ自体がミニチュアの渦巻銀河のように見える。
楕円形状で明るい典型的なバルジに対して、このような渦巻状のバルジは「円盤状バルジ」あるいは「擬似バルジ」と呼ばれている。ハッブル宇宙望遠鏡の観測により、このような2つのタイプが存在することが明らかになった。典型的バルジでは星の生成は終わっているが、円盤状バルジでは新たな星が生まれ続けていることも観測でわかっている。これは銀河自体の2つのタイプ――古くて星生成が止まった楕円銀河と星が作られている渦巻銀河――とも共通しているのが興味深い。
銀河のタイプとバルジのタイプの共通点は他にもある。典型的バルジに含まれる星はランダムな軌道を動きまわっているが、円盤状バルジの星の群れ方や動きは、銀河の円盤の腕に連なる星々とそっくりだ。
2つのバルジタイプの違いは、その起源の違いによるものと思われる。典型的バルジは他の銀河との衝突合体などの大規模なイベントによって成長すると考えられる。一方、円盤状バルジは中心部に入り込む星々やガスによってゆっくり成長すると考えられている。