惑星間の距離が最も近い惑星系を発見
【2012年6月29日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター】
火山世界の溶岩地帯の上に、満月の3倍もの大きさのガス惑星が浮かぶ。満月の出よりも劇的な夜景だ。この奇妙な壮観は、新しく発見された惑星を持つ星、ケプラー36で見ることができる。この恒星の周囲を、非常に近い軌道で回る2つの惑星が発見された。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのJosh Carter氏と米ワシントン大学のEric Agol氏によれば、はくちょう座方向にある約1500光年かなたの恒星ケプラー36を回っている2つの惑星は、これまで知られているどの惑星系よりも互いの軌道が近接しているという。
Carter氏とAgol氏の研究チームはNASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」のデータからこの惑星系を見つけ出した。
この惑星系では2つの惑星が準巨星の周りを回っている。ケプラー36bと名づけられた内側の惑星は地球と比べて1.5倍の直径と4.5倍の質量を持つ岩石惑星と考えられる。公転周期は約14日で、主星からの平均距離は1770万km以内だという。外側の惑星ケプラー36cは地球と比べて3.7倍の直径と8倍の質量を持つガス惑星であり、公転周期が約16日、主星からの距離が約1930万kmと推定された。ケプラー36cのように、海王星や天王星質量程度のガス惑星が主星の近くを公転している場合、その惑星は「ホットネプチューン」と分類される。
ケプラー36bとcの間では、平均してに97日に1回の合(主星と2つの惑星が直列する)が起こる。このとき、惑星間の距離は地球と月との距離の5倍以下になる。ケプラー36cは月よりはるかに大きいため、ケプラー36bでは目覚ましい壮観が空に広がるだろう。このような接近は巨大な潮汐力を引き起こし、これが惑星自体を伸ばしたり縮ませたりすることもありうる。このことから、ケプラー36bには接近による火山活動が起こっているかもしれない。
全く異なる性質の2つの惑星がなぜこのように近くの軌道にやってきたのか、研究者たちは頭を悩ませている。例えば太陽系の場合、太陽の近傍には岩石惑星が、遠方にはガス惑星が分布している。このような、惑星の種類と主星からの距離との関係については、まだわかっていないところが多い。
ケプラー36は超近接惑星を持つ最初の例ではあるが、もちろん最後になることはないだろう。
「このような惑星系が他にどのくらい存在するかが知りたいです」(Agolさん)。「今回の発見は、データをひと目ざっと見ただけで見つけたものです。さらに注意深く調べて、もっともっと見つけたいですね」(Carter氏)。
今回の成果を実現させたのは「星震学」だ。星震学とは星の固有振動を使って星を研究する手法のことをいう。太陽のような星は、内部にとらえられた音波によって楽器のように共鳴している。また楽器と同様に、星が大きくなるほど共鳴は深くなる。この音が星をゆっくり呼吸、つまり振動させる。
「ケプラー36の振動は美しいです。この振動を測定することで、星の年齢と質量、サイズを正確に求めることができました。星震学がなかったら、こんなに密接している惑星を検出することはできなかったでしょう」(英バーミンガム大学のBill Chaplin氏)。