宮下さんが「ホーマー・ダボール賞」受賞 星食観測で貢献
【2012年11月9日 宮下和久さん/早水勉さん/相馬充さん】
長野県の宮下和久さんが、星食の分野で顕著な貢献をした人に贈られる「ホーマー・ダボール賞」を授与された。観測用ソフトの開発やコーディネーターとしての活動が評価されたもので、日本人としては初の受賞となる。
10月20日から開催された世界掩蔽観測者協会(IOTA)年会の冒頭で、星食の分野で顕著な貢献をした人に贈られる「ホーマー・ダボール賞」の今年度の受賞者が宮下和久さん(長野県安曇野市)となることが発表された。
宮下さんは、ビデオから光量変化を測定するソフトウェア「Limovie」の開発者として知られる。月による星食のコーディネーターの日本地区担当者としても活躍しており、各地から寄せられた観測ビデオから未知の重星を多数検出するなど、世界的な貢献が評価された。
宮下さんのコメント
ビデオから光量変化を測定するソフトウェア「Limovie」の開発を始めたのは、星食観測のメーリングリストJOIN(掩蔽観測者のネットワーク)での議論がきっかけでした。実行ファイルのサイズが2MBに満たない小さなプログラムですが、熱心な観測者の皆様により、様々な掩蔽・食現象の観測に用いていただいており、作者としてたいへん幸せに思います。このたびの受賞が、より多くの人に星食観測に興味を持っていただける機会になればと願っております。
宮下さんの受賞時のスピーチ
私を本年度のHomer DaBoll賞に選んでいただき、心より感謝申し上げます。私はこのたびの受賞をたいへん名誉に思います。私はここで、ソフトウェアLimovieのショートヒストリーをお話ししたいと思います。
2000年のある日、接食観測の報告をしたとき、私は国立天文台の相馬充さんから「ビデオモニターを見て星の明るさの変化を見積もってほしい」と依頼されました。目的は重星の検出をすることでしたが、星の明るさはゆっくり、かつ、たいへん複雑に変化していました。そこで、私は、光量変化をもっと詳細にとらえたいと思いました。私は、ビデオの各フレームから、数百枚の画像をキャプチャし、それを通常の(静止画用の)測光ソフトを用いて測定しました。しかし、そのためには莫大な時間が必要となってしまったので、私は、ビデオから直接光量変化を測定できるようなソフトウェアを切望するようになりました。しかし当時そのようなソフトウェアは世の中にありませんでした。
2005年、私は自分自身の課題に対して一つの解答を与えました。Limovieです。生まれたときは本当に小さなプログラムでしたが、今では、さまざまな掩蔽現象を解析できるソフトウェアに成長することができました。お支えいただき、議論いただいたIOTAのみなさまに心より感謝申し上げるしだいです。私はこれからもLimovieの改良を続けていきます。また、様々な種類の掩蔽・食現象の解析も継続して行っていきたいと思います。「ありがとうございました!」
「ホーマー・ダボール賞」過去の受賞者
- 2007年 Dave Heraldさん(オーストラリア)
- 2008年 Edwin Goffinさん(ベルギー)
- 2009年 Steve B. Prestonさん(アメリカ)
- 2010年 Hristo Pavlovさん(オーストラリア)
- 2011年 Scottie Degenhardtさん(アメリカ)