宇宙飛行士が地下訓練中に新種のワラジムシを発見

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【2012年11月27日 ESA

イタリアの地下洞窟で行われていた宇宙飛行士らの訓練で、新種のワラジムシが発見された。


餌を設置する様子

訓練コーディネイターのJo de WaeleさんとNASAの宇宙飛行士Mike Finckeさんが洞窟の池に餌を設置している様子。クリックで拡大(提供:ESA--V. Crobu)

新種のワラジムシ

今回発見された新種のワラジムシ。身長はわずか8mm(提供:ESA--M. Fincke)

国際宇宙ステーション(ISS)参加国の宇宙飛行士の訓練のひとつとして、地下洞窟で数日間過ごす「CAVES」(人間の行動とスキルを訓練評価する共同探検)がある。多国籍のクルーが極限環境の中で、気象学、測量学、地質学、地下生物分類学などの調査を実施するというものだ。

2012年のCAVESは、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんらも参加してイタリアのサルディーニャ島で9月に実施された。生物調査の対象となったのは小さな池に住む甲殻類だ。洞窟内の池の近くに餌を置き、数日後にサンプルを回収した。

科学コーディネイターのJo de Waeleさんと宇宙飛行士らが地上に持ち帰ったサンプルを生物カタログと照合し、さらに分子分析で確認したところ、そこに新種のワラジムシが含まれていることがわかった。

ワラジムシはかつて水中から陸上に上がり陸上生活に完全適応した唯一の甲殻類(カニやエビなどの類)だが、今回発見されたのは、さらに進化サイクルを一周して再び水中に戻ったワラジムシと見られる。

「ごく少数いる水中ワラジムシは、陸上にいるワラジムシの原始的なものと考えられていました。しかし今回の発見で、ワラジムシが再び水中生活へと進化したということが明らかになりました。これはとても重要な発見です」(ワラジムシ研究者のStefano Taitiさん)。

「CAVESの本来の目的は宇宙飛行に備えた訓練ですが、今回の発見で、科学調査プログラムとしても非常に興味深いものだということが示されました」(訓練計画担当者のLoredana Bessoneさん)。

欧州宇宙機関(ESA)のウェブサイトでは、CAVESでの訓練の様子を動画で見ることができる。

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