ブラックホールで輝くM77銀河
【2013年4月2日 ESA/Hubble】
ブラックホールがひそむ中心部から強力な光が放たれる「セイファート銀河」のひとつ、くじら座のM77。その壮観な渦巻きをハッブル宇宙望遠鏡がとらえている。
画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したM77(NGC 1068)だ。くじら座の方向4500万光年彼方にあるこの渦巻銀河は何度も繰り返し研究対象となっており、その研究論文は他の銀河すべてを足した数よりも多いという「銀河界のスター」である。
1780年にPierre Méchainによって発見された当時はまだガス雲と系外銀河が区別されていなかったため、このM77は「星雲」として分類された。1784年にはシャルル・メシエのカタログに「星団」として掲載されている。もちろん今では、ゆるく渦巻く腕と比較的小さなバルジ(中心部のふくらみ)を持つ棒渦巻銀河としてすっかり有名だ。
渦巻きに沿って点在する赤い斑紋は、新しい星が次々と生まれている現場だ。赤ちゃん星からの強い放射により、周囲のガスが電離(イオン化)されている。
大きく伸びる赤茶けた筋模様は、銀河に含まれる塵が青い光を吸収することで赤っぽく見えているものだ。
M77の中心部には太陽の約1500万倍もの質量を持つブラックホールがあり、その重力に引き込まれた周囲の物質が加熱され、その領域だけで通常の銀河の数万倍も強力な光を放っている。高温の電離ガスが輝くこうした銀河は「セイファート銀河」と呼ばれ、M77はそのもっとも近傍の明るい例だ。